会社のカネは誰のもの? ビジネス・ジャッジメントルールと会社財産を危うくする罪

画像: midorisyu

2016.08.04

経営・マネジメント

会社のカネは誰のもの? ビジネス・ジャッジメントルールと会社財産を危うくする罪

山岸 純
弁護士法人ALG&Associates 弁護士・税理士

事業がうまくいかない時、良からぬブローカーが「バラ色の一発逆転ホームラン的な投機話」を持って来たことはありませんか? 社長なら、会社の財産をどう使おうと文句を言われる筋合いはない、とお考えになったことはありませんか? 実は、大きな大きな”落とし穴”がある場合があります。 今回、「ビジネス・ジャッジメントルール」と「会社財産を危うくする罪」という観点から説明していきたいと思います。

このような考え方のもと、会社法355条は、取締役に対し「法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない」義務を課しています。

さらに、会社法は、経営者が事業活動に失敗し、株主の財産を減損してしまった場合に株主が会社に対し取締役の責任を追及することができる規定を設けたり(会社法847条)、また、経営者がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、これによって株主などの第三者に生じた損害を賠償する責任を負う規定を設けたり(会社法429条1項)して、株主を手厚く保護しています。

前者は「株主代表訴訟」として、たまにニュースになっていますね。

もちろん、ノーリスクでカネを増やそうなんて、そんな甘い話は世界中どこを探してもありません。

制度上、株主もカネを経営者に委ねる際に株式が紙くずになってしまうリスクを負うこととなっていますし(株主間接有限責任)、「経営者による事業活動の失敗=経営者の責任」としてしまっては、経営者に対し「結果責任」を課すのと同じであり、これでは、日本中から取締役のなり手がいなくなってしまいます。

ビジネス・ジャッジメントルール

このような、「ノーリスクでカネを増やせるはずもないのは分っているが、あまりにも勝手な経営については責任をとらせたい」という株主の思いと、「利益を得て株主を喜ばせるためには一定のリスクを承知で事業を行わなければならないが、失敗したら責任をとらされるのは勘弁してくれ」という経営者の思いとそれぞれのジレンマを解消するために考え出されたのが、「ビジネス・ジャッジメントルール」という法理です。

この「ビジネス・ジャッジメントルール」とは、別名「経営判断の原則」とも呼ばれており、経営者が事業活動に関する意思決定を行う際、適切な情報を収集し、適切な意思決定プロセスを経たと判断される場合には、当該事業活動が法令の範囲内である限り、結果として会社に損害が発生したとしても経営者の責任は問われないとするものです。

経営者の責任追及問題について歴史のあるアメリカでは早くから判例として確立した法理でしたが、日本でも、平成5年9月16日の東京地裁判決(野村證券事件)以降、判決の中でこの法理を展開するケースが増えています。

なお、日本の裁判例では、概ね、

① 事業活動に関する意思決定をする際、前提となった事実の認識について不注意な誤りがなかったかどうか、

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山岸 純

弁護士法人ALG&Associates 弁護士・税理士

専門は企業法務ですが、国境を越えた家族問題やマンション管理問題など、幅広い分野に取り組んでおります。 時事ネタをくだいてくだいて解説するのが大好きです。 現在、宮内庁における外部通報業務に奉職中。

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