大塚家具の新戦略は理に適っているのか

画像: 大塚家具HP

2015.04.10

経営・マネジメント

大塚家具の新戦略は理に適っているのか

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「親子喧嘩」報道に隠されていた路線転換のリスクとハードルの高さを冷静に検討してみると、大塚家具が向かおうとしている「一般大衆路線」の前途は容易ならざるものと覚悟すべき。

先月末の株主総会をピークに世間を騒がせた大塚家具。ご存知の通り、娘である社長が株主の多数派の信任を得て勝利という決着を見た。実は現社長の久美子氏が小生と同じ大学出身者で、少し前から関心を持って眺めていた。

その過程では茶の間の興味をひくため、「親子喧嘩」「御家騒動」という側面にスポットを当てたTV/週刊誌等の報道が過熱し、同社のブランドを少なからず傷つけたと懸念される。直近の業績悪化も表面化している。今週からは「お詫びセールス」と銘打って巻き返しに掛かるそうで、頑張っていただきたいものだ。

騒動の最中ではそうした三面記事報道にかき消されるのが明らかだったので(それと久美子社長の足を引っ張ることに利用されかねないので)、コラム記事に取り上げるのは控えていた。しかし戦略コンサルタントとしてはとても気になる重要な点がほとんど論点になっていなかったので、ここで採り上げたい。

この権力闘争の本質は、父親である勝久会長が築き上げてきた、従来の「経済的に余裕のある消費者をターゲットとした高級路線」を続けるのか、久美子社長が推進しようとする「より多くの一般大衆に向けた路線」に全面的に切り替えるのか、という「経営の基本路線の選択」だ。決して単なる「世代交代の難しさ」の話でもないし、ましてや「親子喧嘩」という低次元の話ではない。

そして久美子社長の勝利が確定した現時点での隠れた論点は、「本当に『一般大衆路線』への全面切り替えが正しい戦略なのか」というものだ。

もちろん、権力闘争に勝利したばかりの久美子社長側が、今さら錦の御旗を下して、「冷静になって考えてみたらあなた方のいうことのほうが正しいようなので、再度路線変更します」などというわけはない。

その意味で、本稿は他企業の関係者に向けたものだ。特に、今までうまくやってきたが最近は売り上げが伸び悩み、一方で路線の違う同業者が伸びているという状況にある企業において、『路線転換』を検討するにあたって考慮すべき要素を考えてみたいというものだ。大塚家具はそのよいケーススタディになりそうなのだ。決して久美子社長らの新しい門出に水を差そうという意図ではないことをご理解いただきたい。

さて、ちょっと前置きが入ってしまったが、「経営の基本路線の選択」という話に戻ろう。勝久会長(すでに元ですが)の「高級路線」vs久美子社長の「一般大衆路線」という構図だ。

前者のやり方は、欧州のデザイン家具、日本の職人による手作り家具、といった高級な商品を中心に幅広く展示し、来訪時に名前と住所を書いてもらい(これは後ほど顧客データベースに反映される)、広い展示場を担当者が寄り添って案内し、商品説明する。

後者ではイケアやニトリと同じようなやり方になるはずだ。つまり中国や東南アジアで大量規格生産した、割安な普及品を大量に展示(一部はカタログ展示)、大勢の一般客にフリーで(いちいち受付せずに)出入りしてもらい、自由に商品に触れてもらう。たぶん、商品説明も求められた時しかしない。

株主総会でのプロキシーファイト(委任状争奪戦)が決定的になった時点で、焦点の2人の経営者の論点認識は全く違っていた。勝久会長は「考え方の違いは宣伝のやり方だけだ」といい、久美子社長は「経営路線の違いであり、全く相容れない」と語っていたのだ。その意味では久美子社長のほうが現実的な認識を持っていたということだろうか。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

当社は事業戦略・業務改革の2つのテーマを中心に、企業改革をお手伝いします。代表である私は、30年弱にわたる戦略・業務コンサルティングの経験と実績を基に、ハンズオンの姿勢で、実践的かつスピーディな課題解決を心掛けています。事業戦略策定については新規事業・新市場進出を中心にお手伝いさせていただいておりますが、最近は既存事業の見直しも増えています。その際のスタンスは「選ばれる理由」を明確にすることです。またBPMのエヴァンジェリストとして、BPMアプローチ(KPIを軸に狙いと手段を整合させた上で、PDCAサイクルに沿った継続的プロセス改革を進める手法)による「空回りしない」業務改革を唱えております。詳しくは弊社HPをご覧ください。ご登録いただければメルマガもお届けします。

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