大塚家具の新戦略は理に適っているのか

画像: 大塚家具HP

2015.04.10

経営・マネジメント

大塚家具の新戦略は理に適っているのか

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「親子喧嘩」報道に隠されていた路線転換のリスクとハードルの高さを冷静に検討してみると、大塚家具が向かおうとしている「一般大衆路線」の前途は容易ならざるものと覚悟すべき。

つまりこのまま手を拱いていてはジリ貧に陥りかねない、という危機感だったのではないだろうか。

よく似た思いにとらわれる会社経営者は少なくない。いわば「青い鳥症候群」とでもいうのだろうか。新方式を採用してうまくいっている同業者の後追いをかなり遅れてしてしまうのだが、大抵は痛い目に遭うだけに終わる。グローバル規模やアジア規模の巨大で強力な先行企業がいる土俵に、特別のコストダウン・ノウハウもなくコストパフォーマンス競争を仕掛けようとするのであれば、極めて当然の結果といえるかも知れない。

もし大塚家具が本格的に「一般大衆路線」に切り替えるのであれば、独自に何らかのコストダウン手法もしくは大量販売システムを開発する必要がある。もしかすると我々が知らないだけで、久美子社長はそうしたものを構想し、既にめどを付けているのかも知れない。しかし万一そうではない場合、同社の前途は少なくとも当面、いばらの道とならざるを得ないのではと懸念される。よほど社員が奮起し、一丸となってがむしゃらに取り組む必要がある。

これは、同様の状況にある企業が真剣に考えるべきテーマだ。業績が伸び悩んでいる、もしくは明らかに悪化している状況において、直すべきはターゲット市場(where)なのか、それとも商品(what)やアプローチの仕方なのか(how)という問い掛けだ。もしかすると大塚家具が今最も必要なのは、路線転換ではなく高級路線の徹底であり、新富裕層への積極的・戦略的なアプローチなのかも知れないのだ。

つまり、ますます高齢者に富が集中し二極化する日本社会において、実は高級路線の市場は縮小どころか拡大する可能性が十分ある。子供が独立したのを機会に住みやすい住居環境にリフォームしようとする高齢者世帯が、より自分の嗜好に合った家具に囲まれて定年後の日々を送りたいと考えるのはむしろ自然だ。

あとは彼らにいつどうやってアプローチするのか、という部分に知恵を絞れば、おのずと選択肢は出てくる。大塚家具はこうした顧客層に対するアプローチ戦略を十分検討していなかった可能性が捨てきれない。

ここでは家具市場の場合を例にとってお話ししているが、他の市場でも考え方の基本は同じだ。「隣の芝生が青く」見えるからといって単純にそちらに引っ越そうと考える前に、「さて、我々の今いるこの市場に今後拡大する部分があるとすればどこなのか、そして我々はそれを十分取り込めているのだろうか」というごく当たり前の問い掛けをしてみるべきだということだ。

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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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