新規事業における素朴な疑問 (4) 再チャレンジへの狭き道

画像: Televisione Streaming

2015.09.03

経営・マネジメント

新規事業における素朴な疑問 (4) 再チャレンジへの狭き道

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

新規事業に取り組む大企業の行動パターンに関する素朴な疑問シリーズ、その4つめは過去に新規事業で失敗した人材の処遇法。大いに学習効果が見込めるはずなのに、冷遇してしまう日本企業がまだまだ多い。

でも残念ながら社内の他の人たちからはそう見られず、「あ、あの人、飛ばされた」と判断される(当人も、です)。その後、本人に再チャレンジの場を与えない限り、周りは「ウチはやっぱり失敗すると片道キップだよな」というように評価し、「暗黙のルール」として社内に定着するのだ。

もう1つは、新規事業で苦労した当の「人材の活用」という観点だ。そうした人たちは様々な経験を通じて経営センスや交渉スキルなどの面で格段の成長を遂げていることが多いのだが、先に挙げたケースのように全く活かすことができていない企業が少なくない。これは実にもったいないことだ。

本業では既に事業プロセスや流通が確立しているため、事業担当者たちが悩むのは、新商品・サービスの企画や業務プロセスの改善など、ある意味限定された部分になりがちだ。それに対し、新規事業では何から何までゼロベースで構築する必要がある分、事業の価値や顧客へのマーケティングなど経営の本質に関わる部分を根本から考える機会が与えられる。

既存事業では所与だった自社の「看板」が簡単に通じない分野で、どうやって価値を創り出し、市場関係者の信頼を勝ち得ていくのか。社内の誰にも分からないため、何度も独自の仮説を立てては検証し作り直す。関係者に尋ねまくって市場の実態やユーザーの本音をすくい取り、試行錯誤ながらも事業の形を作っていく。

全て他の事業にも応用できる体験とノウハウであり、そこで得た教訓は教科書やセミナーなどでは決して得られない、貴重な1次情報だ。

そして新規事業担当社なら誰でも一度は経験するような、堂々巡りや勘違い。そうした回り道を極力避けるすべも、一度修羅場を経験した担当者ならある程度身につけているものだ。

新規事業開発・推進の渦中で苦労した人たちは、「あのような手は絶対避けるべき」「あそこをもっと押せば道は開けたはず」など、何度も頭の中でシミュレーションを繰り返し、「今度こそは」という気概と知恵に溢れているはずだ。そのような人材が社内にいるというのに、それを活用しないままでいる(場合によっては社外に流出させてしまう)なんて、何ともったいないことだろう。

実は冒頭に挙げた、「企業によって大きく分かれる」2つのパターンの残る一つは、こうした失敗体験のある人材をむしろ優先的に次の新規事業の推進に携わらせるというものだ。

欧米の成功しているベンチャー企業やVCでは主流的な考え方だが、日本ではリクルート以降の、比較的「新興」に属する企業群でようやく根付き始めた程度かも知れない。でも伝統的な日本の大企業でも是非、試してみる価値のある考え方だと思う。

(本記事は2014年11月12日に掲載されたものを再編集しております)

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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