社会インフラを考える (7) 原発を捨て、地熱発電にシフトしよう

画像: Andrew Bowden

2014.09.04

経営・マネジメント

社会インフラを考える (7) 原発を捨て、地熱発電にシフトしよう

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

次の大事故があれば経済・社会崩壊に至るリスクを抱える原発。その再稼働の必要はない。この日本に豊富に存在し、格段に安全で経済的かつ安定的な自然エネルギー、地熱の活用こそ合理的な国家政策だ。

この国内に豊富に存在するエネルギー資源の活用を真剣に検討することこそ、日本のエネルギー政策の主要な一つになってしかるべきだ。

地熱発電のメリットは圧倒的だ。まず経済性。火力や原子力と違って燃料いらずで、ほとんどタダ同然の原価。機器の運転に必要な人員も少ない。装置も比較的小さく機構もシンプルなので保守が割安。ましてや原子力の核ゴミのような厄介な廃棄物も出ないので、処理費用も、住民懐柔のための巨額な対策費も不要。

次に安全性。原子力と違って、災害やテロによりシステムが制御不能になって地域を崩壊させる危険もない。

そして安定性。太陽光や風力と違って、季節・天候・時間に関係なく24時間安定した稼働で高い品質の発電ができる。

最後に環境負荷。他の発電方法に比べCO2の排出量が少ない。このように火力・原子力・太陽光・風力などと比べ圧倒的に優れている。

例えば、リーマン・ショックで一旦は国家経済が破たんしたアイスランドでは、政策転換により今や発電は水力と地熱だけでまかなっており、従来頼っていた輸入燃料には全く依存していない。それでも豊富な地熱が余っているので、地域暖房や凍結防止、野菜栽培の温室、露天風呂運営に使われている。これらのエネルギー・コストはほとんどゼロだから、アイスランドという国は急速に生産性(=国の競争力)と豊かさを取り戻している。

ニュージーランドでも着実に地熱発電設備を増やしており、逆に火力発電所の建設を当面禁止している(建前としては、2050年までにCO2排出量を1990年レベルに戻すため)。

ではそれだけ元来豊富で有利な地熱発電、実際に日本ではどれほど使われているのだろうか。発電電力量は2764GWh(2010年度)、何と日本の電力需要のたったの0.3%ほどにしかならない。要は、全くの「みそっかす」扱いなのだ。

なぜか。技術的な問題ではなく、地元の一部の抵抗が強いのだ(原発に対する国民的反対を無視する政府が、なぜかこうした一部住民の声には非常に神経質だ)。地熱発電のデメリットとしてよく挙げられるのが次の2つだ。

1つは、適している場所の大半が国立公園内にあるため、発電所を建設すると景観を損ねるという意見だ。

確かに地元の観光地では新施設の建設にナーバスになることは理解できるが、これは極端な意見だ。環境保護団体にも冷静になって欲しいものだ。水力発電のために巨大ダムを造るのとはわけが違う。地熱発電所自体が占めるスペースはたかが知れているし、そこから立ち上る水蒸気は温泉宿のそれと基本的には同じだ。地熱発電所の施設デザインを工夫すれば、やがて周囲の風景に溶け込んでしまうだろう。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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