“残業代ゼロ”法案にみる政策パッケージの矛盾

画像: Chairman of the Joint Chiefs of Staff

2014.06.19

経営・マネジメント

“残業代ゼロ”法案にみる政策パッケージの矛盾

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

安倍政権の掲げる成長戦略には様々な政策が含まれるが、大方針または優先度づけが欠如するためか、政策間に矛盾が見られる。

並んで大きな課題とされる高齢化対策は、逃れられない結果に対する対処療法でしかありえないが、晩婚少子化対策は未来の話だから、政権の意思と政策次第で抜本的に改善できる余地がある。

安倍政権は一方で、晩婚少子化対策のために「子育て支援」メニューを幾つか打ち出してはいるが、迫力不足は否めない。人口1億人を保つと掲げながら、具体的・抜本的な政策を矢継ぎ早に打ち出すことをためらっているかのようだ。

その一方で、晩婚少子化対策と全く思想的に相反する、副作用の恐れの強い「時間規制の適用除外」を執念深く推進しようとしているのだ。

こうした矛盾により政策が互いの効果を打ち消しあう事態が生じるのは、政権の中で優先順位がついていないせいだと類推できる。

さらに司令塔が不在なのか、そうした役割にある方がこの矛盾に気づいていないか、または矛盾に気づいていながらも安倍首相が「残業代ゼロ」に個人的に拘るゆえにどうしようもないとさじを投げているのか、いずれかだろう。

国の政策パッケージが多種多様な官僚発の政策群のごった煮である場合、こうした政策間の矛盾が生じることは実は過去にもよくあった。経済が成長している時代はそれでも大した問題はなかったのだが、今のように低成長、いや縮小の時代においては致命的な結果を招きかねない。

同様に企業経営における改革においても、こうした政策間で矛盾があると、改革効果を打ち消しあい、それが意図しない暗黙のメッセージを伝え、思わぬ副作用のみ発現するという事態を招くことがある。企業での改革プログラムを立案・推進する人々にとっては「他山の石」とすべきものである。

我々のようなベテラン経営コンサルタントは苦い経験から学び、これを非常に警戒する。改革の思想とそれに基づく優先度づけが重要なゆえんである。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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