OJTを当たり前のことにした求道者

2011.07.08

開発秘話

OJTを当たり前のことにした求道者

喜田 真弓

職場の先輩や上司が、部下や後輩に対して知識、技術、態度などを指導するOn the Job Training (OJT)。入社後、一通りの集合研修を行った後に、OJTによって新人社員への指導を継続する企業がほとんどであろう。しかし、このOJTが必要なのは入社したての社員だけではない。

「繁忙期には想定外の外出が増えるので、どうしても育成に時間を割けません。誰かに引き継ぐにしても、すぐに人が見つからない。結果的に新入社員がほったらかしになってしまいます」

面倒をかけたくないという気持ちがあるため、新入社員は何も言えない。自主性に任せると言えば響きは良いが、それでは育成放棄と同じ。こうした理想と現実のギャップに現場は悩まされた。この時関が考えたのが、自分が新入社員の受け皿になることだった。

「新入社員が一人でいる時に、自分が何かできないかと考えました。急に話しかけると相手が構えてしまうので、普段から何気ないコミュニケーションを積み重ねて、自然に話せる雰囲気を作るようにしたんです。外出している時は、インスタント・メッセンジャーを使ったりもしました」

先輩が自分のことを気にかけてくれて、声をかけてくれる。こんな自然な形でコミュニケーションが始まれば、気軽に悩みも相談できる。実際、何人もの新入社員が相談しに来るようになった。

こうして新入社員の受け皿になっていくうちに、関はあることに気がついた。

「一人になって困るのは新入社員だけかと思っていましたが、よく周りを見渡してみると、2、3年目の若手社員も同じように悩んでいました」

2、3年目ともなれば、一人前とは言わないまでも、一般的には育成期間を終えている。
ある程度何をすべきか自分で判断できるはずだが、そこには2、3年目ゆえの悩みがあった。

「自分のお客様を持つという責任感がプレッシャーになっているようです。また、もう新入社員ではないので簡単に先輩社員を頼るわけにもいきません。とにかく何でも一人でやろうとして、壁にぶち当たります」

離職率が最も高いのは入社後3年目だという統計結果がある。『自分の限界を感じた』というのが大きな理由の一つだという。関はこう考える。

「若手社員が限界を感じる気持ちは分かります。いくら勉強してもゴールがありませんから。しかし、それはみんな同じです。でも、『だんだん興味が湧いてきた』と思い始めるのもこの時期だと思います。そうなってくれるように、周りがサポートしなくてはいけません」

こうして、新入社員だけでなく、若手社員とも幅広くコミュニケーションをとることにした。特に、若手社員には自分のスキルをフィードバックすることを心がけているという。

「案件対応準備を手伝ったりもしますが、時には若手社員を数名集めて勉強会を実施しています。過保護かもしれませんが、少しでも仕事に興味が湧いてくれれば良いと思っています。若手社員の力は組織全体の底上げにつながりますし、何よりもお客様の迷惑になってはいけないので、そういう気持ちでやっています。自分と同じ考えを持った人が増えれば嬉しいですね」

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