行き帰り便の統合で食品リサイクルを環境調達 - ベイシア

2010.11.05

経営・マネジメント

行き帰り便の統合で食品リサイクルを環境調達 - ベイシア

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

関東地盤のスーパーのベイシアは食品卸大手の日本アクセスと組み、物流の無駄を省くことによって、食品リサイクル率を高めると共に、食品回収コストを4割低減する取組を始めた。今回は、そのベイシアの取組を紹介する。

関東地盤のスーパーのベイシアは食品卸大手の日本アクセスと組み、食品リサイクル率を高めると共に、食品回収コストを4割低減する。取組の内容は、ベイシアの店舗に商材を納品したアクセスのトラックが、店舗の食品残さを持ち帰り、家畜の飼料にする工程へ回すというもの。商材納入を終えたトラックは、これまで空で物流センターに戻ることになっていたが、今回はその無駄を食品残さの回収に活用する。

「小売業の店舗からは賞味期限切れの弁当や惣菜、加工食品などの食品廃棄物が年間二百数十万トン規模で出る。小売業は食品リサイクル法で飼料などに再生するリサイクル率を12年度までに45%以上にするよう求められている。

セブン&アイ・ホールディングスやイオングループなど大手各社が食品リサイクルに取り組んでいるが、コスト負担が課題となりリサイクル率は20~30%台にとどまっている。(出所:2010年11月1日 日本経済新聞 9面)」

ベイシアはこれまで専門回収会社に回収を委託してきたが、この取組によってベイシアの日本アクセスに支払う回収費用は1kg当り約30円を支払う。これはこれまでの専門会社への委託コストに比べると3~4割のコスト低減となる。

今回の取組のポイントは、リサイクルというより行き帰り便の統合という物流の課題。行きの便にあたる納品物流は、かなり昔からコスト低減の対象となっており、荷主企業も物流会社も無駄の削減などの工夫に努めており、改善の余地が少なくなっている。

そこで機会として捉えられているのが、納品が終わり空になったトラックの帰り便の活用。しかし、ピンポイントで行き帰りのそれぞれの便の需要をマッチさせるのが難しく、一気に広がるものではなく、地道に取り組んでいくしかない。

その中で、動脈物流と静脈物流の統合は一つの狙い目となる。動脈物流とは調達から生産、流通、最終利用者へつながる物流。静脈物流は利用者が出した廃棄物を回収、再資源化もしくは最終廃棄へつながる物流。動脈物流と静脈物流とが統合しやすいのは、ポイントとなる出荷/回収場所が一致している点。

特に、食品残さの回収は、残さの再利用促進を目的とした2007年の改正食品リサイクル法の施行で、再利用を前提としたものについては、市町村の境界を越えて残さの運搬が可能になった。この改正は、まだ最近のことなので、小売やレストランチェーンなどでまだ動脈物流と静脈物流の統合を進めていない企業は多いのではないか。LeanでGreenな環境経営の実現の観点からは、是非、今回の取組を参考に、動脈物流と静脈物流の統合に貴社でも取り組んで頂きたい。


中ノ森 清訓/株式会社 戦略調達 代表取締役社長

調達・購買業務に関わる代行・アウトソーシング、システム導入、コンサルティングを通じて、お客様の「最善の調達・購買」を実現することにより、調達・購買コスト、物流費用、経費削減を支援する傍ら、調達・購買活動から環境経営に貢献する方法は数多くあると、環境負荷を低減する商品・サービスの開発やそれを支える優良なサプライヤの紹介など環境調達に関する情報発信活動を行っている。
コーポレートサイト: http://www.samuraisourcing.com/

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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