宅配便との不毛な戦い。なぜ宅配BOXが最初から使われないか

2010.07.15

経営・マネジメント

宅配便との不毛な戦い。なぜ宅配BOXが最初から使われないか

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

実は、宅配会社各社さんといつも不毛な戦いを繰り広げています。 その戦いとは、不在伝票を巡るやり取りです。 この些細なやり取りには、実は、環境経営が抱える根本的な課題が隠されています。今回は、宅配会社さんとの不毛な戦いから、環境経営が抱える課題とその克服方法について考えます。

宅配会社がこれだけのデメリットにも関らず、宅配BOXを利用しないのには理由があります。それは、過去、宅配BOXに入れたはずの荷物が行方不明、生ものを宅配BOXに放置、指示なく宅配BOXを利用したとのクレームなど、宅配BOXを利用して様々なトラブルを経験してのことです。

しかし、これらは自社の画一的な対応を守るための言い訳に響きます。宅配BOXのメーカもこうしたトラブルを踏まえ、荷物の出し入れについての履歴を残し、荷物の紛失事故の責任を明確にできる宅配BOXが増えています。生ものについては確かに受取人との調整が必要ですが、それ以外の荷種の扱いまで、生ものと同じにする理由にはなりません。指示なく宅配BOXを利用したとのクレームについては、不在時に宅配BOXを利用して欲しい層と利用して欲しくない層のどちらが多いかの見極めです。恐らく、後者は圧倒的に少数派です。環境負荷の低減、自社のコスト低減、より多くの受取人の満足という観点からは、こうした少数派をどう上手く捌くかを考えた方がメリットは大きいものと考えられます。

今回の宅配BOXを宅配会社が使わないことへの疑問は、当初、単純な問題と考えていたのですが、調べてみると、かなり奥深い問題のようです。宅配便と宅配BOXの関係では、荷主(お客様)-宅配会社-宅配BOX会社-マンション企画会社-受取人と、非常に多くのプレーヤーが関っています。受取人は宅配会社や宅配BOXを選ぶことはなく、宅配会社から見れば、受取人はお客様ではない。マンション企画会社にしてみれば、宅配BOXが使われるか否かは大きな問題ではなく、ともすれば、荷物の出し入れの履歴管理などできなくても、宅配BOXが形だけ付いていればよく、とにかく価格の安いものを選ぶといったことが行なわれない訳ではありません。

宅配BOXの利用が進まない主な原因は、個々のプレーヤーがそれぞれの利益を追求した結果、全体でムダが生じているという合成の誤謬の典型例です。日本では、これまでも省エネルギー、省資源を進めてきた結果、個社レベルでできることはかなり実施されており、今後、更に環境経営を進めていくには、複数のプレーヤーが関るサプライチェーンの問題、社会的な問題、合成の誤謬によって生じた問題に取り組まなければいけない機会が増えてくると予測されます。

このような問題は、自社のビジネスだけを考えていては解決できず、全体、サプライチェーンを俯瞰して、個別最適ではなく、全体最適を考えなければ解決できません。サプライチェーンでの問題の解決は簡単な問題ではなく、解決に時間も労力も掛かりますが、それだけ、問題を解決した時のインパクトは大きく、市場も大きなものとなります。また、パートナー企業を巻き込んで一社ではできない問題解決をしていますので、このような市場には競合もなかなか参入できません。

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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