影響力を解剖する(13)受け手の反応レベル

2007.09.20

仕事術

影響力を解剖する(13)受け手の反応レベル

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

いつものように長々と続けてしまった 『影響力を解剖する』 ロングレビューですが、今回が最終回です。 内容は、影響の受け手の反応についてです。

受け手が、どの程度深く影響を受けているのかという

「反応の深さ」

は、3つのレベルに分類できます。
(米国の社会心理学者、ケルマンの説)

・表面的服従
・与え手に対する同一視
・価値観の内面化

[表面的服従]

いわゆる「面従腹背」です。

表面的には相手に従っているけれども、
心から従っているわけではない。

態度や信念まで変えるまでに至っていないレベル。

単に「賞」が欲しい、または「罰」を回避したいから
仕方なく従っているだけというケースが多いでしょう。

ですから、もし賞や罰影響力がなくなれば、
影響の与え手に従わなくなる可能性が高いでしょうね。

[与え手に対する同一視]

これは、与え手との満足な人間関係を確立したり、
維持するために与え手の影響を受け入れる場合です。

そして、受け手が自ら進んで
意識的に与え手の考え方や行動を模倣したり、
与え手が期待するような役割を果たそうとします。

たとえば、武道や芸事の世界で、
憧れの師への弟子入りが許された人は、
師匠の指示があろうがなかろうが、おそらく、
師匠が期待する行動を進んで取ろうとするはずですよね。

ただ、これはあくまで師匠と弟子という人間関係に
基づくものです。

[価値観の内面化]

これは、受け手自身の態度や価値観が、
与え手のそれと合致するがゆえに、与え手からの働きかけに
応じるもの。

また、十分納得した上で、
与え手から言われた通りに考えを変えたり、
行動したりする場合です。

そして、影響を受ける前にまでに持っていた
態度や価値観は、受け手が納得した上で修正されます。

このため、影響を受けたことの持続力が高く、
与え手が受け手を監視しなくても、新しい考え方や行動を
自発的に取り続けます。

すなわち、「価値観の内面化」は、
もっとも深いレベルで影響を受けた場合ということです。

さて、企業などの組織運営においては、
成員が、目先の報酬(昇給、昇進)や罰(減給、降格)で
表面的に動くのではなく、会社の考える価値観に沿い、
自主的・自律的に動ける組織のほうが当然ながら強いですよね。

だからこそ、経営理念やビジョン、行動指針を明確に掲げ、
常日頃から繰り返し成員に伝え続けることによって、
企業の価値観を成員に内面化させることに最大限の努力を
注ぐ必要があります。

この超有名な事例としては、
ザ・リッツ・カールトン・ホテルの

「クレド(信条)カード」

がありますね。

リッツカールトンの全スタッフは、
常にクレドカードを携帯して、時間があれば何度も読み返す。

そしてまた、朝礼では、本社から毎日送られてくる課題
(例えば、無理な注文をしてきた顧客にはどう対処すべきかなど)

をクレドに書かれた内容をベースに考えるという方法を通じて、

「価値観の内面化」

を徹底しているというわけです。

『影響力を解剖する』
(今井芳昭著、福村出版)

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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