クラウドとクラウド

2009.12.01

IT・WEB

クラウドとクラウド

猪口 真
株式会社パトス 代表取締役

「クラウド」が花盛りだ。そのひとつはもちろん「クラウド・コンピューティング」だが、むしろ注目したいのは、同じクラウドでもクラウド(群集)だ。私たちはこれからこの2つのクラウドの中で生きていくことになる。

クラウドは技術かマーケティングか

 「クラウド」が花盛りだ。そのひとつはもちろん「クラウド・コンピューティング」であり、2年ほど前からアメリカで提唱されたネットワーク・コンピューティングの概念だ。最近の大手ITベンダーの広告アプローチはほとんどがこの「クラウド」であり、「クラウドを制する者がITを制す」といった感さえうかがえる。
 しかしこのクラウド・コンピューティングは、米国の調査会社Forrester Researchが、「破壊的テクノロジーになる」と言うように、IT業界の大きなうねりになると叫ばれているわりには、一般への浸透、理解はいまひとつ進まない。
 実際に、「単なるBuz用語にすぎない」「昔からあったネットワーク・コンピューティングとの違いも明確ではない」といった批判もよく耳にするし、定義自体あまりはっきりしない。
 GartnerはAmazon.comの「Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)」やGoogleの「Google App Engine」をその例として挙げながら、「スケーラビリティが非常に高いITシステムを『サービス』として提供するコンピューティング」としているそうだが、これで「なるほど」と膝を打つ人がはたして何人いるのだろうか。

 考えてもみれば、こうしたIT業界の流れは今に始まったことではなく、多くのアルファベット3文字の流行語がIT担当者から得意げに語られていたものだ。「ユビキタス」「ユーティリティ」など、最近あまりお目にかからなくなった言葉は数知れないし、マーケティング戦略の一部としての概念ならば、合点もいく。
 Merrill Lynchによると,クラウド・コンピューティングがもたらす市場は,2011年に1600億ドル規模になるらしい。こうした市場の活性化によって、高度な技術が一般市場へ流れていき、より安価なテクノロジーが使えるようになれば、一般企業にとっても、新しいサービスやマーケティング戦略が展開できるようになるだろう。今の段階では、Akamai、Amazon.com、Salesforce.comなどの企業のサービスが注目されているようだが、日本の企業の名前が並びだす日も近いはずだ。

もうひとつのクラウド

 もうひとつのクラウドは、同じクラウドでも「Crowd」(群集)だ。クラウド・ビジネスとは、群集(匿名、非匿名含めて)から集まった情報や知識、知恵をサービスレベルに昇華させ、これまでにない商品やサービスを提供するビジネス・モデルと言えるだろう。
 広い意味で捉えれば、SNSやブログサービス、口コミサイト、比較サイトなどもこれら群集の知恵を活かしたものであり、圧倒的な支持と参加会員数をもとに新たなメディアとして誕生させた。日本最高の発行部数を誇る読売新聞でも、楽天市場の会員数にははるか及ぶことはできない事実からも、すでにメディアの地位は逆転したと見る人のほうが多い。
 ただし、こうした群集ビジネス・モデルは、人を集めてメディアとしての価値を高め、広告価値を高めるというこれまでのマスメディアビジネスと本質的には変わることはない。(もうひとつ、最近目にすることが少なくなった無料ペーパーの配布モデルと全く同じだ)コンテンツを無料で流し、そこに広告を得るということだ。
 こうしたモデルはインターネットの力の一部を活用しているに過ぎず、自らのコンテンツの質を生成することができない弱みは、やがては飽きられ、メディアとしての魅力は半減してしまうだろう。

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