日立、東芝、ソニーなど大手電機メーカの自社生産縮小の意味

2009.11.25

経営・マネジメント

日立、東芝、ソニーなど大手電機メーカの自社生産縮小の意味

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

日立製作所や東芝、ソニーなど大手電機メーカが薄型テレビの自社生産を縮小しています。本稿では、この自社生産の縮小、生産委託の活用が、調達・購買業務のあり方に与える意味について考えます。

日立は中国など3ヵ所あった海外テレビ工場での生産を今年に入りすべて打ち切り、国内に1工場だけ残します。東芝は、東南アジアの生産をインドネシア1拠点に集約し、今期中にもベトナム生産から撤退します。東芝は、8月に英国での生産を終了し、欧州の生産はポーランドに集約しました。東芝のテレビ工場はピーク時の7から5ヵ所に減少します。ソニーは08年初めに13ヶ所あったテレビ工場を段階的に削減。メキシコのティファナ工場を台湾EMS大手の鴻海精密工業に売却するなどして、10年3月までに6ヵ所までに減らします。

背景には、サムスン電子やLG電子など韓国勢の攻勢による価格競争の激化があり、これらの大手電機メーカは、自社生産からEMS(Electronics Manufacturing Service:電子機器の受託生産を専門に行う企業)などへの生産委託により、生産コストの引き下げを狙っています。

日立は、今期は販売台数の約5割にあたる70万台程度の生産を外部に委託し、EMSを活用し生産を打ち切った中国での販売も継続します。東芝は、外部委託比率を、09年3月期の約3割から来期には5割以上に増やします。ソニーも生産委託でコスト引き下げを図っています。(出所:日本経済新聞 2009年11月16日 1面)

こうしたドラスティックな自社生産を軸としてきたビジネスモデルの見直しは、調達・購買業務のあり方にも転換を迫ります。

これまでの調達・購買業務は、特定の品目・業界の知識や、サプライヤとの人間関係に頼ったやり方が中心でした。しかし、外部への生産委託が進めば、調達・購買の対象は、特定の品目から生産そのものの外部委託先の選定に一気に変わってしまいます。それまで培った品目・業界の知識や、サプライヤとの人間関係が、一気に通用しなくなってしまうのです。

このように、調達・購買の対象がどんどん変わっていく世界では、対象品目・業界の知識や、サプライヤとの人間関係に頼ったやり方から、対象に左右されない調達・購買の技術そのものを磨いていく方向にシフトしなければ、調達・購買部門、担当者の存在意義が危うくなってしまいます。

自社生産の縮小は、調達・購買業務のあり方が、品目・業界の知識や、サプライヤとの人間関係頼みから、普遍的な調達・購買技術の習得・研鑽に移ってきている事も意味しているのです。

今回のケースのような生産委託の事例を目の当りにしますと、信用バブル崩壊後、終身雇用への回帰や雇用を守る事の大切さを、経営者や識者が高らかに唱えていますが、それが根拠のない絵空事に感じられてなりません。個々人としては、心地良い甘い言葉を信じるのではなく、どのような業務も、普遍的なプロフェッショナルのレベルまで磨き上げ、成長産業などの異業種にでも応用できるようにしないと、職そのものが無くなってしまう時代になったと感じます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

フォロー フォローして中ノ森 清訓の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。