どんなストーリーを描き、周囲に浸透させていますか?

2009.07.11

組織・人材

どんなストーリーを描き、周囲に浸透させていますか?

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

経営者、リーダーの仕事として、意味あるストーリーを紡ぎだし、周囲に浸透させるというものがあります。ただ、これを自己保身のために使ってしまうと非常に性質が悪いです。本来は、みんながハッピーな未来を描くために使うべきことです。

 ストーリーの力は強力です。細かいストーリーを紡ぎつつ、それが大きなストーリーに繋がっていると、更に強力なマネジメントとなります。

 ただ、なかなか前向きに使える人も少ないかもしれません。

 私が見た、すごく悪い例を書きましょう。

 人はなかなか、自分の失敗を認められないものです。

 私が見た中で、たちが悪いな、と思ったのは、部下を育てる能力がないことを認められない人でした。彼は自分で物事を処理する能力はあるのですが、オリジナルのスタイルで、なかなか真似できないスタイルでした。

 でも、その認識が彼自身にない。

 そうすると、なぜ俺と同じことができないんだ?となります。

 ステップに分けたとしても、多分、同じことはできないだろうな、と傍から見ていて思いました。

 ちょっと、ベースの能力が低い部下がいました。彼とやっても、絶対伸びないだろうな、という人でした。

 「育てるんだ!」とその上司は一生懸命、彼と仕事をしました。でも、伸びるわけがないと思いました。結局、自分のスタイルの押し付けだったからです。

 そして、しばらくして、彼を育てるのを諦めたようでした。

 その後、その人が作っているストーリーにも、気分が悪くなりました。

 自分が育てられなかった人は、誰も育てられる人ではなかったのだ!というストーリーを前提とした言動をして、そういうストーリーを定着させようとしていたのです!

 見ていて、気分が悪いかったですね。本当に。

 その部下の人が、誰かの手にかかってできるようになったら困りますよね。

 自分のマネジメント能力、育てる能力のなさを示していますから。

 ある意味、自己保身です。

 第三者的に見れば、その状況は明らかなのですが、上司本人がそのストーリーを信じ込んでいること、育たなかった部下にまで、そのストーリーを信じ込ませようとしていて、部下すら信じようとしていることが衝撃でしたね・・・。

 おそろしい。

 人はみな、自分がかわいいのです。

 これは自戒を込めて書いています。

 いつなんどき、私が同じようなことをしてしまわないとも限らないですからね。

 人の成長を願う時、自分ではない人が、ひょっとしたら、その人の能力を開花させることができるかもしれないということを、ちゃんと認識する必要があります。

 ちゃんとね。

 ちょっとしたストーリーを周囲に浸透させる力は、1つの能力ではあります。それは、経営者、リーダーにとっては必須のことです。

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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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