「三丁目の夕日」が描く昭和は、本当に良い時代なのか?

2008.09.15

ライフ・ソーシャル

「三丁目の夕日」が描く昭和は、本当に良い時代なのか?

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

映画「三丁目の夕日」の全篇に溢れている夢と人情に、 素直に目頭を熱くもするが・・・ 経済成長の止まった平成のこの時代に、 あの頃の憧憬にどっぷりつかって思考停止することには、いささか反発を覚える。 ぽっちゃん便所のあの時代に・・・ 昭和37年生まれの私は、戻りたいとは思わない。

「昭和三十年代主義」浅羽通明著の中に、
呉智英氏の昭和30年代評が掲載されている。
「豊かさが国民の間に広がり、しかしそれが退廃にならない程度に貧しさが精神を引き締めていた時代だった」「人生を打ちのめし、社会を破壊しつくすほどの不幸ではない程度の、小さな不幸が人間や社会に陰影を与えていた。それが昭和30年代の魅力である」と。

映画「三丁目の夕日」の街は、
日本的な共同体をセーフティーネットとする、
適度な貧しさを含む安定した世の中であり・・・
そこに住まう家族達は、
けなげに、平凡に生きることを喜々として受け入れているのだっ。

昭和ブームに、学ぶべきことは、
「昔はよかった」なんて憧憬=退行ではなく、
隣にある、そして、自分にも降りかかるであろう適度な貧しさや不幸への共感であり。

マスコミがつくる「のっぺりとした正しいだけの世界」ではなく、
小さな不幸や貧しさが精神を引き締めている陰影ある社会への理解であるっ。

未来を提示しないままの、過去の美化は、思考の停止だっ。

これからの世の中は、
小さな不幸や貧しさを抱えて生きる覚悟をしなきゃいけなくなることを、
これからの若い人達に教えてあげなくちゃいけない。
「昔は良かった」なんて思い出に浸る前に、
その分際に会った幸せの抱きしめ方を教えてあげなくちゃいけない。
それが、昭和を生きた私達・大人の役割だと思うっ。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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