非責任な投資家 【3】

2008.07.30

仕事術

非責任な投資家 【3】

猪熊 篤史

企業における所有と経営の分離について引き続き考えてみたい。

「うちの会社は創業時から創業者(株主)同士の対立が絶えなくて困る」という企業もあるだろう。本社の事業部を独立させて子会社を作ったのに、「独立したとたんに本社の言うことを聞かなくなって困るっている」という会社もあるだろう。

第1ステージから、第2ステージの課題、つまり、独立事業目的会社においては「所有」、投資目的会社においては「経営」が問題になっているケースは多いかもしれない。これらの問題は、第1ステージの初期の段階で対処されることが理想的だろう。このような問題が第1ステージから問題になることは、普通であり、自然であろう。しかし、第1ステージから大問題になるのであれば、会社の成り立ちに問題があって、根源的な問題ということになるだろう。

投資家の非責任さが問われるのは、第2ステージからである。第2ステージは、第1ステージ開始時の前提条件が見直されることによって始まる。第1ステージから第2ステージに継ぎ目なく円滑に移行する場合もあるし、一時の混乱を経て、第2ステージに移行する場合もある。

設立時から経営に関与しない純粋な投資家の出資を受けている場合や有能な経営者を中心として事業部が分社化される場合などは、設立時から第2ステージにあると言えるのかも知れない。

第1ステージにある会社の投資家の多くは非責任ではない。独立事業目的会社においても投資目的会社においても投資家(株主)は会社の経営者であるか、あるいは、実質的に会社の経営を支配していることになるからである。

企業成長は、「所有」と「経営」という完全に利害が一致しない力の綱引きの中で一定のバランスを見出すことによって生まれる。企業にこのような一定のバランスをもたらすのは「経営」の力である。それは企業の経営者による経営、あるいは、投資家(親会社)の経営(所有の力)である。投資目的会社においては、会社(子会社)内部の経営も重要である。親会社の経営の傘下で、適切な経営が行われなければならない。

さらに、そのような企業成長をもたらす活動の原動力となるのは「経営」と「顧客ニーズ」という、やはり必ずしも利害が一致するものではない力の綱引きである。社内の組織を取りまとめることは狭い意味での経営である。また「顧客ニーズ」と適合して利益や成長、あるいは、顧客満足を生み出す活動を広い意味で経営と呼ぶ。

「所有」と「経営」を調和させて、一定のバランスを生み出すことは広い意味での「経営」である。

広い意味での「経営」では、非責任な顧客や非責任な投資家と狭い意味での「経営」との対話が不可欠になる。

【V.スピリット No.87より】

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。