コンセプチュアル思考の基本スキル[3]~類推

2026.08.24

仕事術

コンセプチュアル思考の基本スキル[3]~類推

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

AIが協働パートナーとなる時代、人間に残される思考は「コンセプチュアル(概念的)思考」になる。それはつまり──雑多な出来事・情報から本質を抜き出し、概念を形成する。客観的認識にとどまらず、主観的意志(信念・理念)を行動に変える。そのコンセプチュアル思考における5つの基本スキルについて解説する。今回はその3つめ──「類推」。

喩えることでこそゆたかに深く伝わる内容がある

類推は、比喩や寓話、象徴といった表現形式を生み出します。私たちは現実生活のなかでじつに多くの見聞、経験、観察、思考などを積み重ねるわけですが、そこから何かしら本質的なものをつかむようになります。そのつかんだものを外に発するとき、直接的に言うのではなく、示唆的に伝えたいという動機が起こります。そこで用いられるのが、比喩や寓話、象徴(シンボルマーク)といったものになります。

比喩や寓話、象徴は言ってみれば、伝え手がつかんでいる本質的内容を一見変わった外形をしたカプセルに忍ばせて相手に伝えようとする試みです。

どのようなカプセルを使い、また、どのように忍ばせるかは、伝え手側の表現力のゆたかさによります。奥深い示唆表現ができあがることもあれば、陳腐な示唆表現になってしまうこともあります。

同時に、比喩や寓話、象徴といった表現が差し出されたとき、受け手も読解力を問われます。受け手からみえるのは、外側のカプセルだけです。伝え手が内に忍ばせた本質的内容は直接的にはみえません。比喩や寓話、象徴からどれだけゆたかにメッセージを読み取れるかは受け手側の力量によります。

そのように、類推という思考力を鍛えることは、比喩や寓話、象徴などの表現を使ううえでも、読み取るうえでも重要なことになります。

比喩表現には、直喩、隠喩、換喩、提喩などいろいろな種類があります。そのなかでもここではとくに、隠喩を取り上げます。

隠喩とは、ある物事を説明するのに「~のようだ、~みたいだ」と直接的に言わずに、他に類似するものを借りてきて代用し、その特性や本質を表す方法です。英語では「メタファー|metapfor」といいます。古今東西の古典には、このメタファー(隠喩)づかいにすぐれたものがたくさんあります。

例えば、マキアヴェッリの『君主論』に出てくる「獅子と狐」。君主となるべき人間には、獅子的な素質と狐的な素質の両方が必要だという主張です。獅子と狐を持ち出してくる感覚と慧眼はすばらしいものがあります。

また、古代ローマ時代の詩人ユウェナリスが『風刺詩』で用いたのは、「パンとサーカス」でした。これも現代に通じる普遍的で奥深い比喩ではないでしょうか。

思考ワークチャレンジ ~たとえ話づくり「●と□」

では、コンセプチュアル思考ワークに挑戦してみてください。私が研修やワークショップで行っているのが、たとえ話づくりです。あなたがつかんでいる本質的内容を自分独自の比喩に変換して伝える作業です。

イソップ物語の『ウサギとカメ』『北風と太陽』は、たとえ話の名作です。さきほど紹介した『獅子と狐』『パンとサーカス』も卓越したメタファーです。これらはいずれも、2つのものを対比させながら生き方や社会のありようを人びとに考えさせる内容です。比喩を用いるからこそ、奥の深い伝達となっています。 さて、あなたはどんなメタファーを繰り出して、世の中の本質を人びとに伝えられるでしょうか。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

キャリア・ポートレート コンサルティング代表。組織・人事コンサルタント、概念工作家、『源流の森ブックス』編集発行人。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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