2026.08.18
課題を解決するほど、なぜ課題は増えていくのか ――ソリューション社会の先にある、人間の次の進化
齋藤 秀樹
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
私たちの社会は、課題を解決することで発展してきた。 遠くへ行けないから、鉄道や自動車が生まれた。情報を速く届けたいから、電話やインターネットが生まれた。膨大な計算や事務処理を人間だけでは処理できないから、コンピューターが生まれた。そして今、人間の知的作業の一部まで担う生成AIが急速に普及している。 課題がある。技術が生まれる。ソリューションが生まれる。社会が豊かになる。 これは人類の発展を支えてきた重要な循環である。 しかし、その延長線上にいる今だからこそ、一度立ち止まって考えてみたい。 私たちは、本当に課題を解決するためにソリューションを生み出しているのだろうか。
以前より高い技術を使える。
以前より生産性も高い。
それでも、次の瞬間にはまた新しい不足を突きつけられる。
現代社会は、商品やサービスだけを生産しているのではない。
「あなたには、まだ何かが足りない」という認識そのものを生産する社会になってはいないだろうか。
不足が需要を生む。
需要が市場を生む。
市場が新しい商品を生む。
商品が新しい基準を生む。
新しい基準が、次の不足を生む。
ここに、
不足 → 消費 → 一時的充足 → 新しい基準 → 新しい不足
という、終わりのない循環が成立する。
「課題があるから市場が生まれる」の、その先
本来、課題解決とは単純だったはずである。
課題がある。
解決する。
課題がなくなる。
しかし、経済活動として考えれば少し事情が変わる。
ある課題を解決するサービスが生まれる。
市場ができる。
会社ができる。
人が雇われる。
投資が集まる。
売上目標が設定される。
そうなれば、企業は成長を続けなければならない。
ここで課題は、「解決すべき対象」であると同時に「需要の源泉」にもなる。
だからといって、企業が意図的に人々を不幸にしていると考える必要はない。
問題はもっと構造的である。
ソリューションを提供し続ける経済構造は、必然的に新しい不足、新しい不便、新しい改善余地を発見し続ける方向へ働きやすい。
「もっと速く」
「もっと便利に」
「もっと健康に」
「もっと効率的に」
「もっと魅力的に」
「もっと成長を」
一つの基準を達成すると、次の基準が現れる。
ゴールそのものが前方へ移動し続ける。
結果として、社会は豊かになりながら、同時に「足りないもの」も増えていく。
この逆説こそ、現代社会を考えるうえで重要ではないだろうか。
問題を解く能力が高いほど、方向を間違えたときの代償も大きい
人類は、驚異的な課題解決能力を獲得した。
科学。
医学。
金融。
経営。
マーケティング。
データ分析。
そして人工知能。
「どうすればできるか」を考える能力は、かつてない水準に達している。
私は、この能力を知能と捉えている。
しかし、知能が高くなればなるほど、別の力が重要になる。
「そもそも、それをする必要があるのか」
「何のために、それをするのか」
「その課題は、本当に解決すべき課題なのか」
「誰が、それを課題だと決めたのか」
「その課題を生み出している構造は何なのか」
「解決した先に、どんな社会をつくりたいのか」
こちらは、単なる知能ではない。
知性である。
知能は、問題を解く。
知性は、何を問題として扱うべきかを考える。
次のページAIは、この循環を止めるのか。それとも加速するのか
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株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。
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