2026.08.18
課題を解決するほど、なぜ課題は増えていくのか ――ソリューション社会の先にある、人間の次の進化
齋藤 秀樹
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
私たちの社会は、課題を解決することで発展してきた。 遠くへ行けないから、鉄道や自動車が生まれた。情報を速く届けたいから、電話やインターネットが生まれた。膨大な計算や事務処理を人間だけでは処理できないから、コンピューターが生まれた。そして今、人間の知的作業の一部まで担う生成AIが急速に普及している。 課題がある。技術が生まれる。ソリューションが生まれる。社会が豊かになる。 これは人類の発展を支えてきた重要な循環である。 しかし、その延長線上にいる今だからこそ、一度立ち止まって考えてみたい。 私たちは、本当に課題を解決するためにソリューションを生み出しているのだろうか。
つまり、
効率化 → 余白
になるとは限らない。
現実には、
効率化 → 処理能力の向上 → 仕事量の増加 → 新しい効率化
という循環になる可能性がある。
もしそうであれば、技術は仕事を減らしているのではなく、仕事をさらに投入できる環境をつくっているとも言える。
ここに、現代のソリューション社会が抱える一つの逆説がある。
ソリューションが増えても、働く人の悩みは消えていない
日本の職場を見ても、同じ問いが浮かぶ。
この十数年だけを見ても、企業にはさまざまな仕組みが導入されてきた。
働き方改革、ストレスチェック、エンゲージメント調査、1on1、キャリア研修、DX、人事システム、心理的安全性、リスキリング、ウェルビーイング施策。
それぞれには意味がある。
しかし、それだけ多くの対策が導入されてきたにもかかわらず、働く人の悩みが消えたとは言い難い。
厚生労働省の令和6年「労働安全衛生調査」では、現在の仕事や職業生活について「強い不安、悩み、ストレス」を感じる事柄がある労働者は68.3%だった。その人たちが挙げた内容では、「仕事の量」が43.2%で最も多く、「仕事の失敗、責任の発生等」が36.2%、「仕事の質」が26.4%と続いている。なお、この調査は前年から設問形式が一部変更されているため、単純な経年比較には注意が必要である。
ここで言いたいのは、ストレスチェックが無意味だということではない。研修が無駄なのでもない。DXが間違っているわけでもない。
問いたいのは、そのさらに手前である。
なぜ、これほど多くのソリューションを導入しながら、それらを必要とする問題そのものは繰り返し生まれるのか。
社員が辞める。採用を強化する。
管理職が育たない。研修を増やす。
会議が長い。会議効率化ツールを導入する。
社員が疲弊する。ウェルビーイング施策を始める。
若手が主体的に動かない。キャリア研修を行う。
一つひとつを見れば、合理的な判断である。
しかし、少し離れて眺めると別の景色が見えてくる。
課題 → ソリューション → 一時的改善 → 根本構造の温存 → 別の課題 → 新しいソリューション
私たちは、この循環そのものを疑う必要があるのではないだろうか。
DXを進めている。しかし「何を変えるのか」は明確なのか
この問題は、日本企業のDXにも象徴的に現れている。
IPAの「DX動向2025」では、日本企業は、DXによる成果を把握するための指標を「設定している」と答えた割合が3割以下だった。一方、米国とドイツでは8割以上である。また日本では、全社的な業務プロセスの変革より、個別業務の最適化に取り組む企業の割合が高いことも報告されている。
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株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。
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