2026.08.11
金融資産を増やせば、人生は豊かになるのか ――新NISA時代に考える「自分投資会社」という生き方
齋藤 秀樹
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
給与が上がったはずなのに、生活が楽になった実感はない。 給与明細を開けば、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税、住民税が差し引かれている。そこに食料品、光熱費、住宅費をはじめとする物価上昇が重なり、以前と同じように暮らしているだけでも、家計の余裕は失われていく。
自分にとっての豊かな人生を持続可能にすることである。
ここで難しいのは、「豊かな人生」の定義が、一人ひとり違うことである。
高い収入を得たい人もいる。
家族との時間を増やしたい人もいる。
社会的に意味のある仕事をしたい人もいる。
好きな地域で静かに暮らしたい人もいる。
生涯現役で働きたい人もいる。
仕事を減らし、学びや創作に時間を使いたい人もいる。
大切なのは、社会が示す成功の形を、そのまま自分の目的にしないことである。
年収が上がった。
資産が増えた。
役職が上がった。
知名度が高まった。
それでも、時間がない。
健康を失った。
家族との関係が薄れた。
自分が何のために働いているのか分からない。
それでは、会社としては成長していても、人生としては豊かになっていない。
自分投資会社が見るべき決算書は、金融資産の増減だけではない。
心身は健やかか。
自分の時間を生きているか。
大切な人との関係は育っているか。
自分の能力を生かせているか。
誰かや社会の役に立っている実感があるか。
以前より視野が広がり、人間として成熟しているか。
人生に納得感があるか。
これらもまた、重要な経営指標である。
投資効果を「お金」だけで測らない
投資という言葉には、投じたものを回収するという意味がある。
そのため、自己投資について考えるときも、私たちはすぐに経済的な効果を求める。
この資格を取れば、年収はいくら上がるのか。
この研修に参加すれば、昇進できるのか。
この本を読めば、仕事に役立つのか。
この人と会えば、仕事につながるのか。
もちろん、時間やお金には限りがある。
投資効果を考えることは必要である。
しかし、すべてを短期的な収益で測れば、本当に大切な投資を切り捨てることになる。
すぐには役に立たない学び。
自分の価値観を問い直す時間。
家族と過ごす時間。
何の目的もなく自然に触れる時間。
成果を求めず人の話を聴く時間。
誰かを無償で支える経験。
失敗して、自分の未熟さに気づく経験。
こうしたものは、すぐに年収や資産額へ反映されない。
それでも、人間としての深さ、判断力、良心、他者への理解を育てる。
何年も後に、仕事や人生の重要な選択を支えることもある。
自分投資会社は、すべてを効率化する会社ではない。
遠回りや余白を、浪費と決めつけない会社である。
ただし、何となく時間を使うことと、豊かな余白を持つことは違う。
重要なのは、その時間が、自分の人生にどのような意味を持っているかを自覚することである。
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株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役 一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
富士通、SIベンダー等において人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、事業会社の経営企画部門、KPMGコンサルティングの人事コンサルタントを経て、人材/組織開発コンサルタント。
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