なぜ同じ行動でも評価が変わるのか── “事前事前期待”をマネジメントする技術

2025.12.09

経営・マネジメント

なぜ同じ行動でも評価が変わるのか── “事前事前期待”をマネジメントする技術

松井 拓己
サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)

なぜ、同じ行動をしているにもかかわらず、ある人の評価は高く、別の人は低くなるのか。ビジネスの現場では、この“不可思議なズレ”が日常的に起きています。

行動を一つひとつ評価するレンズとして働きます。このレンズが曇っていると、どれほど努力しても、成果が安定しません。だからこそ、事前期待のレンズを曇らせずに整えることが必要なのです。

事前期待を設計するとは、「これからどのような価値が提供されるのか」「どのようなプロセスで進むのか」「どれくらいの粒度で説明されるのか」こうした“未来の状態”を相手と共有する行為です。未来が共有されると、相手は安心し、行動が正しく処理されます。未来が共有されないと、相手は不安になり、行動を誤解します。

これは接客・営業・マネジメント、あらゆる対人領域で共通して起こる現象です。

事前期待のズレは、ほとんどの場合「事前」に生まれる

多くの人が誤解しているのは、事前期待のズレは「行動の途中」「行動が終わったあと」に生まれるという認識です。しかし実際には違います。

事前期待のズレのほとんどは行動が始まる前の“事前”に生まれているのです。だからこそ、事前期待の設計が強烈に効いてくる。行動そのものを変えるより、事前期待という“前提”を整えるほうが、評価の変動を大きく制御できます。

事前期待は3つのレイヤーで構造化できる

事前期待は曖昧なものではありません。構造化し、見える形に整理することで扱えるようになります。事前期待には4つの種類があります。

・共通的な事前期待(すべての顧客が持っている事前期待)
・個別的な事前期待(個客ごとに異なる事前期待)
・状況で変化する事前期待(同じ顧客でも時と場合によって事前期待は変化する)
・潜在的な事前期待(顧客自身も思ってもみない事前期待)

事前期待の認識が曖昧なままでは、行動は正しく評価されません。逆に、解像度を上げて事前期待を丁寧に扱える組織は、驚くほど成果が安定しはじめます。

なぜ“事前期待 × 行動”で説明すると、人の行動が理解できるのか

世の中のビジネス書の多くは「行動の改善」を語ります。しかし行動は、事前期待という文脈が整わない限り、意味を持ちません。事前期待が整っていれば、相手は多少のミスを許容します。事前期待が整っていなければ、完璧な行動でも誤解されます。価値は“行動の絶対値”ではなく、事前期待に対する一致度の相対値で決まるからです。だからこそ、同じ行動をしても評価が変わるのです。これは「人間性」や「センス」の問題ではありません。事前期待の問題です。

事前期待は変えられる。だから、評価は安定する。

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松井 拓己

サービスサイエンティスト (松井サービスコンサルティング)

サービスサイエンティスト(サービス事業改革の専門家)として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。              【最新刊】事前期待~リ・プロデュースから始める顧客価値の再現性と進化の設計図~【代表著書】日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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