時間の現象学:時性という価値付与

2022.06.23

ライフ・ソーシャル

時間の現象学:時性という価値付与

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/現在に内在する物事の特殊な一部も、一般にその過去や未来としての〈時性〉を付与することが可能であり、実際、かなりのものが、現在にあって現在ではないものとされている。/

事実であろうと虚構であろうと、現在の脈絡において、その原因や結果として想定され、その過去や未来として設定された物事は、現在の〈生活世界〉の統一整合性をおびやかすものであってはならないが、しかし、それらの物事は、いったん設定された以上、状況の一部となり、可能的にせよ、機能的にせよ、〈意義〉として他の物事に影響を及ぼす。とくに、過去は、その〈生活世界〉の統一整合性を成立させている根拠の一部となっている場合には、強固な〈背景事象〉となる27。

27 〈背景事象〉とは、他の物事の適合(不適合)条件となる物事であり、このような脈絡規定効果を〈意義〉という。前章参照。

過去が〈背景事象〉となり、他の物事に対して〈意義〉を持つのは当然であるにしても、未来が〈背景事象〉となり、他の物事に対して〈意義〉を持つのは奇妙であると思われるかもしれない。しかし、先述のように、未来は、物理的・事実的に未来の物事なのではなく、あくまで現在の物事の結果として想定されているものであり、想定されているという意味では、まさに現在において想定されている。とくに、そのような未来の結果が組織や個人の〈存在意義〉として想定された場合には、強固な〈背景事象〉となる。そして、言うまでもなく、組織や個人の〈存在意義〉は、現在の物事のひとつである。

(純丘曜彰『価値論の基礎概念』から)

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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