メンガーのスポンジ:フラクタル組織の末路

2021.07.24

組織・人材

メンガーのスポンジ:フラクタル組織の末路

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/民主的、というと聞こえがいいが、合意しているのは、民主的に決めよう、ということだけで、その中身はたがいに絶対に妥協しえず、結局、にっちもさっちも動けない。やがて、組織は形骸化し、だれも信用しなくなる。メンガーのスポンジは、最終的には、体積ゼロ、質量ゼロになる。/

 実際、フランチャイズなど、地方ごとの既存の総合企業体が特定分野、半身のみ本部の傘下に入っているだけで、すぐに反逆が起きる。いまや顧客までこの似非フラクタルの主要部分に組み込まれており、彼らもまたそれぞれ勝手にその企業の理念を語って、それに反しているとクレームをつける。イヤなら止めればいい、と切り捨てようにも、その別理念に賛同するキメラ部分は、組織の内部深くにまで食い込んでおり、身動きが取れない。

 たとえば、左派政党は、労働組合との関係を断とうという連中と、それを基盤とする連中との呉越同舟。同様に、右派政党も、地元主義と、業界連携と、二律背反。企業でも、たとえば自動車産業で、従来のエンジン中心型か、車輪ごとのモーター型か、根本原理、戦略方針をまとめられず、どっちつかずのまま、経営資源と対応時間をあたら中途半端に双方へ費やし、どちらの分野でも世界に遅れをとりつつある。

 民主的、というと聞こえがいいが、合意しているのは、民主的に決めよう、ということだけで、その中身はたがいに絶対に妥協しえず、結局、にっちもさっちも動けない。やがて、組織は形骸化し、だれも信用しなくなる。メンガーのスポンジは、最終的には、体積ゼロ、質量ゼロになる。


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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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