キリスト教の世界観

2020.10.21

開発秘話

キリスト教の世界観

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/よく西欧の歴史観は、天地創造から最後の審判まで直線的だ、などと言われるが、じつは、エデンの園に始まり、エデンの園に終わる、きれいな歴史の円環になっている。/

/よく西欧の歴史観は、天地創造から最後の審判まで直線的だ、などと言われるが、じつは、エデンの園に始まり、エデンの園に終わる、きれいな歴史の円環になっている。/

キリスト教国教化とともに、397年、第三回カルタゴ教会会議で、諸教会の文章のうち、事実かどうかはともかく、伝承として使徒に基づくとされる初期のもの、27編がまとめられ、『新約聖書』とされます。最初の数百年の間に、ほっておくと、あちこちの司教がかってなことを言い出すのがわかってきたので、教義の正統性は、これらのいずれかの聖書文章に根拠を持ち、かつ、他のいずれの文章にも矛盾抵触しない、という典拠主義が採られ、ここにキリスト教の神学が成り立ってきます。

J どこかのネット事典みたいですね。でも、歴史を経てきた『旧約聖書』ですらその後もずっと切り貼りみたいなままだったのに、『新約聖書』は、わずか百年くらいの間にあちこちの教会でばらばらにできた文章の寄せ集めなんだから、その中でもうすでに矛盾抵触したりしてしまっているんじゃないんですか?

そこをどうにか切り抜け、うまくこじつけて、ぜんぶ丸く収めるのが、神学者たちの腕の見せどころ。とはいえ、政治的な権力争いも絡み、延々と神学論争が展開したんですよ。それで、イエスの教えに従って行動することより、イエスとは何だったのか、信じ思うことのほうに重点が置かれることになったのです。

J で、結局、キリスト教って、どんなことを信じているですか?

まず、神ですが、キリスト教以前のユダヤ教からして、アブラハムの神とモーゼの神の二つが接ぎ木されています。カナンの山の神、エルシャッダイは、紀元前1800年ころ、アブラハム族がカナン地方に住み着いたときに帰依したもの。これに対し、シナイ半島のホレブ山の神、ヤハウェは、紀元前1350年ころ、モーゼが使命を受けたものです。そして、モーゼがエジプトから救出したヨセフ族がもともとアブラハム族と同じヘブライ人で、カナン地方に合流したことで、ヤハウェはもともとアブラハムの神、エルシャッダイだった、として、一つにまとめられます。

また、エルシャッダイにしても、ヤハウェにしても、当初はよくある地元の山の神だったのですが、ユダヤ教になることで、ユダヤ人を選民として保護する神となり、また、そのユダヤ人がバビロン捕囚の後に世界に散ることにおいて、また、キリスト教が人種を問わない普遍宗教となることにおいて、いつでもどこでもいる普遍神としての性格を強めます。その根拠となったのが、旧約聖書におけるモーゼの問いに対する神の答えです。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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