コロナ禍がもたらすのは「処し方の変化」か「在り方の変化」か

画像: けんたま/KENTAMA

2020.07.14

経営・マネジメント

コロナ禍がもたらすのは「処し方の変化」か「在り方の変化」か

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

私たちはこの第1波コロナ禍で、いろいろなことが「変わった/変わるだろう」と口々に言います。確かに多くのことが変わるのでしょう。しかし、変わるといっても、表層的な変化と根本的な変化、外的な変化と内的な変化、といったように質やレベルがあり、そこに注視することが重要だと思います。

コロナ禍が根底で問うているのは、人類の行き過ぎた諸活動と地球環境との不調和かもしれませんし、人類の貧富格差かもしれません。その観点から、事業そのものの中身をどう変えていくかといった議論はほとんど聞こえてきません。どれだけの人が大きな因果の環で、事業の在り方、個々人のキャリアの在り方を問うているでしょうか。

それで、ここからは私が専門とする人財教育・キャリア形成についての話に移ります。コロナ禍が起きてしまった世界ではありますが、私はこの禍のあるなしに関わらず、人財教育・キャリア形成については大きな転換点にさしかかっていたと思います。それは「処し方」から「在り方」へと、意識と行動を変えていくべき転換点です。

もし、このコロナ禍によって、人財教育・キャリア形成についての考え方が「処し方」から「在り方」に重心を移すなら、それは大きな環の変化であり、コロナ禍がもたらしたプラス面だといえます。そのあたりのことを2つの観点から述べます。

◆あなたは健康な樹木? 不健全な樹木?

本質を離れたところのささいな部分に執着し、そこでもがいている状況を「枝葉末節にとらわれる」などと言います。そこで、人の能力を樹木に喩えてみたのが下図です。


樹木が生き生きと花を咲かせ、豊かに実をつけるために必要なことは何でしょう───根を広く大地に張ること。太い幹を天に伸ばすこと。さらには、そこからいくつも枝を出し、葉を茂らせ、燦燦たる陽光を受けて健やかに生長していくこと、です。

私たちの事業現場・職場では、ますます成果が求められています。短期に、効率的に、数値で表れる成果ほど歓迎されます。そのため職業人としての能力開発は、どんどん業務処理的な知識・技能習得へと傾き、細分化され、即効を狙うものになります。

書店に並ぶ数多くの実務本、ハウツー本、成功本。最新の業界情報を披露するセミナー。テクニカルスキルを身につける研修。こうしたものを常に取り込み、アタマと手先を器用に磨き続けないと職場からはじかれる時代になりました。

これはいわば、樹木の枝・葉のみをとがらせ、揺り動かし、木の実を急いている状態のように思います。その間、根や幹はなおざりにされています。根や幹がしだいに弱り細ってきているにもかかわらず、私たちは「もっと多く、もっと早く」の成果を追って(追わされて)いるのです。樹木としては何とも不自然・不健全な状態にあります。

コロナ拡大が起こって、会社は従業員に対し、リモートワーク環境を整え始めました。それは必然の対策とはいえ、相変わらず従業員に求めるものは、成果であり、効率性です。いまだからこそ従業員1人1人の幹や根っこを育もう、ではありません。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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