コロナ検査を拡充するために今できること

画像: IAEA Imagebank

2020.05.10

経営・マネジメント

コロナ検査を拡充するために今できること

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

政策担当者は「できない理由」を並べ立てるのではなく、「できることは何か」に知恵を絞って欲しい。現場は「今のやり方、今の体制では『とても無理』」と言っているのだ。「ならばやり方と体制を変えればよいのではないか」と頭を切り替えて欲しい。

PCR検査に関しては、公表または報道されている内容から判断すれば、次の3つが工程上の主なボトルネックといえそうだ(スループットを上げる=処理数を増やすにあたってのボトルネックであって、単純に時間が掛かる工程が主要なボトルネックとは限らないことに注意されたい)。そして陽性感染者が一挙に判明するので、軽症者・無症状感染者を収容できる施設を確保することは必須だ。

第一のボトルネックは、患者または病院・診療所からの問い合わせを受けてPCR検査が必要かどうかを判断する「帰国者・接触者相談センター」(大半が保健所)の聞き取り担当者が不足していることだ。各地の保健所のスタッフが電話に張り付いているのだが、「電話がつながらない」「電話で相談しても、判断するのが難しいためか検査に進めない(その結果、重症化してしまった)」といった苦情があふれている。

そもそも多忙な保健所のスタッフがいちいち聞き取り判定してきたのは、片っ端から検査した場合のその後の処理能力がなかったから、いわばゲートキーパー役になっていたというのが実態だ。だからこの後の2つのボトルネック解消法とセットになって解決されないといけない。

このボトルネックの有効な解消法は、その工程自体をなくしてしまうことだ。「帰国者・接触者相談センター」を介さない「地域外来・検査センター」を設け、韓国でもやったドライブスルー/ウォークスルー方式にして、どんどん検査を実施してしまうのが結局は賢い。既にいくつかの地方で地元の医師会や大学病院と協力して始めている。他の地域でも倣えばよい。

このボトルネック解消策は同時に、検体採取という(もしかしたら次の新たなボトルネックになりかねなかった)作業の処理能力も一挙に拡充することになる。そして第一のボトルネックが解消されると、放っておくとすぐに次のボトルネックに渋滞が起きるはずだ。

第二のボトルネックは、(PCR検査の検体を採取した後にそれを集めた検査所にて)検体に試薬を加える工程だ。検査装置にかける前の作業で、検査キットを使って一つひとつ正しく入れていかないといけないので、手間がかかる上に神経をすり減らす作業だ。

韓国がどうやってこのボトルネックを克服したのか、小生も最近の報道番組で知った。この作業を韓国では自動化していたのだ。韓国はMARSで痛い目に遭った経験から、ウイルスによる感染爆発が再び来ること、その時に備えてこうした検査自動機が必要なことを理解し、それを実用化していたのだ。実にダイナミックかつ合理的だ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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