オフィス労働生産性を向上させるために(2)やる気を引き出す工夫をせよ

画像: Channel City Camera Club

2019.07.04

組織・人材

オフィス労働生産性を向上させるために(2)やる気を引き出す工夫をせよ

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「オフィスにおける労働生産性を向上させるために必要なこと」シリーズ第2弾。 前回は経営者/管理者側からも従業員側からも共通して意識すべき点として、直面する仕事が「本当に付加価値を生んでいるのか」についてよく考えるべきと述べた。第二弾の今回は、従業員が生産性を高めるための指導のあり方、特に「やる気の引き出し方」について考えてみたい。

オフィスワークに限らないことだが、労働生産性を上げる第一歩は当人がやる気を出して仕事をできることだ。幾つもの研究によると、自分で自分のやる気を引き出せる人は、同輩たちよりも仕事ができ、評価も収入も高くなる傾向がある。

「生産性」に関する研究の第一人者であるチャールズ・デュヒッグ氏は、高い成果を収める人は、自分の時間をどう使い、自分のエネルギーをどう配分するかを、自分で決められる人たちであると主張する。彼らは、どのように目標を設定すべきか、仕事の優先順位をどうするか、自分が関わるプロジェクトをどう進めるべきかを理解しているのだという。

これは直観的にも納得できることだ。やる気のある人はエネルギーにあふれ、高い集中力で仕事に取組み、周りの人を巻き込み、大きな仕事や価値ある仕事をやり遂げる。しかし同じ人が(大切な人を失うとか上司とそりが合わないなどの理由で)やる気を失ってしまうと、これが同じ人かと思うくらい意気消沈して、仕事が進まなくなってしまう。そんな様子を身近で見たことがある人も多かろう。

では上司はどうやったら部下にやる気を持たせ、しかもそれを続けさせられるのだろうか。

先に挙げたデュヒッグ氏はその著書『あなたの生産性を上げる8つのアイディア』(原題は“ Smarter Faster Better: The Secrets of Being Productive”)の中で、いの一番で「やる気を引き出す」という項目を挙げており、その秘訣を「選択する機会を与える」ことだと断定している。幾つかの実験によると、命令されたものではなく自分で選んだものなら、人はどんなつまらない仕事でも進んでやる傾向がみられるという。

もっと正確にいうと、やる気を引き出すのに一番効果的な方法は2つのことを達成することだという。一つは自己決定権、つまり「自分で自分をコントロールしているのだ」と自分に確信させること。もう一つは、その行動に、より大きな意味を与えることだ。

とにかく選択することで人は「自分で自分をコントロールしている」という感覚を得ることができ、その感覚が私たちを行動に駆り立てるのだ。

だから優秀な保険営業員は、見込客に「どうしますか?」と尋ねる代わりに、「毎月払いにしますか、それとも一括年額払いにしますか?」という具合に客に続けて選択させることで、客がすべて自分で決めたように感じさせながら契約を取るのがうまい。

一方で、介護施設でずっと決められた通りのスケジュールやメニューで生活していると、大抵の人は受け身の態度が完全に定着してしまい、肉体的にも精神的にも急速に衰弱していくものだ。これは自己決定の快感を脳が忘れてしまうために、やる気を引き出す能力や生きる気力を失わせる最も効果的な方法なのだ(したがって将来完璧な介護ロボットが開発されて老人たちに「上げ膳、据え膳」の生活をずっとさせると、利用者は幸せになるどころか急速に痴呆が進んでしまうだろう)。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

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