日本の「従業員エンゲージメント」が、酷く低い4つの理由(【連載21】新しい「日本的人事論」)

画像: Atsushi Boulder

2018.12.26

組織・人材

日本の「従業員エンゲージメント」が、酷く低い4つの理由(【連載21】新しい「日本的人事論」)

川口 雅裕
組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

組織・人事に関わる全ての施策は、日本人の特性や自社の独自性への洞察なしには機能しない。それは、OSが違えば、アプリが動作しないのと同じである。欧米の真似でもない、うまくいっている会社の真似でもない、日本企業において本当に機能する組織・人事の考え方や施策について思索・指南する連載。

四つ目は、職能型の処遇が、それぞれの強みや使命をあいまいにし、プロフェッショナルの自覚を低下させていることだ。自分の役割や使命が明確に定められ、自分の強みとともにそれが周知されている環境で、能力を発揮できていれば、エンゲージメントは高まる。これはそもそも、欧米の職務型の処遇システムが目的とするところである。誰でもできる仕事だと思うとやる気も湧かないが、私しかできない、私だけに期待されている役割だと思えればやる気は出る。ダメなら次はないという危機感もあるから、必死になって結果を出そうとする。賃金を上げるには、自らの労働の価値を上げることだと考えるから、強みや専門性を磨くための学ぶ姿勢も生まれる。

日本の職能型の処遇システムは「専門性や強み」より、「汎用的な業務遂行能力」が重視される。欧米が“仕事に焦点を当てて個別の職務内容を「ジョブ・ディスクリプション」として記述する”のとは対照的に、日本では“人に焦点を当てて階層別に画一的な「等級定義」や「評価基準」が定められる”。強みや専門性、役割や使命よりも、汎用性の高さや器用さ、会社都合による異動にいつでも応えるような姿勢が求められる。“個々の力量が問われるプロフェッショナル”ではなく、“主体性や熱意は抑えて、全体を見て空気を読みながら適切な言動を選択する能力が問われるメンバーシップ”が重要なのである。これでは、エンゲージメントの高い状態はなかなか望めない。

エンゲージメントを高めるには、上司のリーダーシップやチームビルディング、職場環境の改善や組織開発、仕事の与え方や福利厚生制度の改定といったアプローチもあり得るだろう。しかし、上に述べたような根本問題を軽視したままでは、効果はかなり限定的なものに終わるに違いない。時間と賃金のリンクを法の範囲内で(早期の法改正を求めたいが)、部分的にでも切り離すこと。オーバー・コンプライアンス(過剰規制)の見直し。多すぎる部署と役職者が原因となっている、複雑なコミュニケーションの解消。職務型処遇システムの段階的な導入。これらが、エンゲージメント向上のポイントなのである。

【つづく】

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川口 雅裕

組織人事研究者 /NPO法人「老いの工学研究所」理事長/一般社団法人「人と組織の活性化研究会」理事

組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革・健康経営など)や、高齢者・高齢社会をテーマとした講演を行っています。

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