活用のコツは、AI・ロボットに価値を込めるサービス設計に組み直せるか|service scientist's journal

画像: Fabrice Florin

2018.05.14

経営・マネジメント

活用のコツは、AI・ロボットに価値を込めるサービス設計に組み直せるか|service scientist's journal

松井 拓己
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

AIやロボットをサービス事業の顧客接点で活かしていくことに、期待が高まっています。AIやロボットの活用は何が問題になるのでしょう。実は、AIやロボット自体の問題よりも、それを活用するサービス側の問題の方が大きいのです。

サービスの設計の方が大問題

製造業では、価値を製品に込めます。価値を発揮する製品を設計したうえで、製造装置を通して設計図を材料に転写することで製品を作って、商品を顧客に届けます。対してサービス業は、価値を人材に込めます。価値あるサービスを設計して、それを“サービススタッフ”に教育やトレーニングという形で転写して、そのサービススタッフが顧客にサービスを届けます。

AIやロボットは、上記のうちで“サービススタッフ”の代わりになるものです。サービススタッフに教育やトレーニングをしたのと同様に、AIやロボットにもサービス設計のインプットが必要です。AIやロボットが使いものになるかどうかは、サービスの設計次第なのです。

残念ながら、どの企業もサービスの設計は極めて曖昧です。“サービス設計部”という部署すらない会社がほとんどです。サービスの設計が曖昧なまま、いくら優れた技術を手に入れても、有効に活用できないのは当然です。AIやロボットにガッカリする前に、サービスの設計を見直す必要があるのです。


先進技術の活用が、サービスの価値を下げては意味がない

たとえば外食店で、スタッフの対応に定評のあるお店が競合店につられて、顧客がタッチパネルで注文するシステムを導入しました。顧客とスタッフの接点が減った結果、スタッフの負荷は減りましたが、それ以上にリピーターを失ってしまいました。このように、サービス事業の技術的進歩とサービスの価値向上は、必ずしも一致するとは限らないのです。

AIやロボットという道具を手に入れるだけで差別化しようとすると、本質からズレてしまいます。道具は”何を持つか“よりも”どう使うか“が重要です。自社のサービスの価値は何なのか。それを実現するためのサービス設計全体の中で、AIやロボットの活用が有効なのはどこで、あえて人が役割を担うことが有効なのはどこか。「事前期待の的」と「勝負プロセスの組み立て」の中に、“仕組み化”の要素を加えることで、サービス設計をAIやロボットを活かすように組み直すことが重要です。


AIやロボット活用のその先の課題

AIやロボットの活用と同時に、困ったことが起こります。サービススタッフに、より高度で付加価値の高い気付き型業務が集中するようになるのです。サービスの人材の育成をテコ入れしなければ、AIやロボットの活用の先で、つまずいてしまう可能性あります。そこで、サービスの設計を、サービススタッフの人材育成にも活かしていく必要があるのです。

AIやロボットを活用し、付加価値型のサービススタッフを育成するためのサービス設計は、十分に検討できているでしょうか。

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松井 拓己

松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。           代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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