開発購買は何故上手くいかないのか?-その3-

2018.02.07

経営・マネジメント

開発購買は何故上手くいかないのか?-その3-

野町 直弘
調達購買コンサルタント

今回は開発購買特集の三回目です。トヨタ自動車がいかに開発購買(原価企画)活動を上手く実装しているかについて考察してみました。

2つ目の特徴として上げられるのは共有価値や意識などの企業文化的な点。トヨタはトヨタウェイやトヨタグローバルビジョンなどの理念やトヨタ行動指針を持っており、価値観の共有を図っています。
このような価値観はあらゆる業務推進に影響を与えているようです。本著のアンケート結果によると「設計業務を推進するにあたりこのような価値観を意識している人が約8割に上る」。目標コスト達成の目的についてのアンケート結果でもトップの回答が「良品廉価な製品を(お客様に)お届けしたいから」という内容となっており、このような価値観のが全社員に対して大きな影響を与えていることがわかります。

3つ目の特徴はマネジメントの仕組みです。代表的な仕組みは製品主査制度でしょう。製品主査はいわばその車に対する最高執行責任者で、マーケティング、販売、企画、コスト、収益、質量などに責任と権限を持ち車の開発を進めていく役割をもっています。しかし組織上開発・設計部門は主査とは独立した組織となっているので、開発者の直接の人事権を持つ上司ではありません。
それでも主査職は開発技術者からたいへん尊敬されており、直接の指示命令権がないにも関わらずタテヨコの組織が上手く機能しています。

それに加え大きな役割を果たしているのが各種の委員会活動です。CCC21委員会、VI委員会、RR-CI委員会、部品シナリオ委員会など新聞等で聞いたことがある委員会の名前です。
この委員会活動は他社でいうCFT(クロスファンクションチーム)的なもので、原価や質量の目標達成のための支援手段となっています。
委員会活動というと形式重視の報告会のように聞こえますが、生産、生技、開発、原価、調達、取引先まで一体となって世界最安値を目指す活動をグローバルで進める推進チームであり、委員会は原価目標達成のための支援活動になっているとのことです。
また開発、製品主査、委員会の3次元組織で社内に起こりうる様々なコンフリクトの調整を委員会が行なっているという特徴もあります。

トヨタはこのような仕組みを持つことで開発部門に原価企画機能を定着させています。やらされているのではなく、自ら進んでやることを実現しているのです。

開発購買は何故上手くいかないのか?

開発購買は何故上手くいかないのか?-その2-

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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