信頼関係が支える日本品質の危機

2017.11.21

経営・マネジメント

信頼関係が支える日本品質の危機

野町 直弘
調達購買コンサルタント

昨今、神戸製鋼が客先に納品したアルミ他のデータ改ざんが大きな問題になっています。この事案がもたらす影響やそれではこの課題をどう解決すればよいでしょうか? 私は今回の事案は日本企業の競争力に大きな影響を与える問題になり得ると考えています。

こういう信頼関係の下に成り立ってきた高品質ですが、今回の品質問題が引き起こす課題は非常に大きいと言えます。今までは信頼関係の下、製品メーカーの受入れ検査などは外観と数量
確認くらいしかやっていませんでした。データ改ざんは法律上は問題なくても社会的な責任やもし製品品質に影響を与え、それが事故や瑕疵につながるのであれば大きな問題です。
ですから今後は製品メーカー側も必要要件を明確にしてそれを検査しなければならなくなるでしょう。

そうするとどういうことになるでしょうか。

当然のことながらコストアップにつながります。昨今、AIとかロボティックスオートメーションとかの技術が進化してきましたが、検査というプロセスは製造工程の中で最も自動化、機械化が難しい工程です。私の知る限り寸法精度や員数の確認程度しか自動化できていないのが実態でしょう。ましてや成分検査などどうしても人手がかかります。ようするに高品質を維持するためには高コストになる可能性が高い。

今までは信頼関係の下、かけなくて良かったコストをかけなければならなくなるということです。
そうすると企業としての対応方法は3つしかありません。一つはコストが高くても売れるものを高品質で売っていく。二つ目は品質を(他国並みに)落とす。三つ目はコストをかけないように品質を維持する。
もちろん一番良いのは三番目です。

しかし難易度が高い。また、今までの信頼関係による品質確保の仕組みは正にこれを実現してきた仕組みです。
もしこれを否定すると、品質は高いけどますます高コストになってしまう。これをブレイクスルーしなければ日本企業の製品の競争力はますます落ちてしまいます。

今回の件はこのように日本企業の競争力に大きな影響を与えるきっかけとなる事案と言えるでしょう。

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野町 直弘

調達購買コンサルタント

調達購買改革コンサルタント。 自身も自動車会社、外資系金融機関の調達・購買を経験し、複数のコンサルティング会社を経由しており、購買実務経験のあるプロフェッショナルです。

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