「富山県人は極力採らない」が危機レベルにアウトなワケ

2017.07.14

組織・人材

「富山県人は極力採らない」が危機レベルにアウトなワケ

増沢 隆太
株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

不二越の本間会長の発言「富山で生まれ地方の大学に行ったとしても、私は極力採らない」「偏見かも分からないが、閉鎖的な考え方が強い」が大いに批判を呼んでいます。言葉狩りや発言の一部分だけを切り取って騒ぎ立てることもある昨今の風潮ですが、今回の発言は完全アウトです。上場企業という大企業トップの見識として、コンプライアンス上もコーポレートイメージ上も、危機対応にあたらなければならないレベルの重大事態です。

1.「私は極力採らない発言の内容
決算発表会見で本間会長は、同社の採用方針について「富山に優秀な人材がいないわけではないが、幅広く集めたい」と説明したとのこと。富山で生まれてからそのまま大人になった人は駄目、さらには「富山で生まれて地方の大学へ行った人でも極力採らない」なぜなら「閉鎖された考え方が非常に強い」からとのこと。すべてダメです。

今入ったニュースでは富山労働局からも指摘が入ったとのこと。人事関係の専門知識があれば常識ですが、往々にして人事出身の社長は少ないため、こうした「常識」を持たないことが多くあります。今回の完全アウト発言は同社会長の無知から出たものではありますが、企業としてのコンプライアンス上も、何より採用方針上も大問題です。

日本国憲法の3大原則・基本的人権の尊重で、人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他で差別があってはならないと決められています。民間企業が自社の採用方針に則って採用を決めることは何ら問題ありませんが、その判断基準に不公正があってはならないのです。出身地と出身学校の場所で採否を決めるというのは完全にこの点で憲法違反になります。


2.言ったらおしまい「バカ発言」
最近多発の安倍内閣閣僚や自民党政治家によるウッカリ発言のように、発言が元で謝罪や役職辞任に追い込まれる例は後を絶ちません。そのほとんどがオヤジギャグのような低レベルの冗談やセクハラ・パワハラ要素満載のダメ発言で、そもそも問題発言というような政治信条の懸かったものではなく、ただのバカ発言ばかりです。身内の後援会や決算説明会であっても、今のコミュニケーション環境は誰でもスマホで撮影や録音できます。バカ発言が漏出しないと考える時点で、もはや危機管理意識が欠落しているとしかいえません。

重要な点はここなのです。企業トップや閣僚など、本来リーダーである人が危機意識を持っていない、バカ発言を「うっかり」やってしまうことこそ最大の問題なのです。発言そのものより、バカ発言をしてしまう思考回路と危機感核欠如はリーダーとしての資格に巨大な疑問を持たせるものです。というか、リーダー無理なんでさっさと辞めていただく必要があるほどの欠陥といえるでしょう。

つまりバカ発言をするトップはもはやトップたる資格はありません。言ったらおしまいなのです。テレビバラエティで不謹慎な発言をするのは芸人さんばかりというイメージがあるかも知れませんが、実はプロの芸人さんはちゃんと発言を計算して行っており、発言が問題になるのは芸人や毒舌タレントと呼ばれる人よりも、そもそもそうした露出のための準備も努力もしていない、ただ時流に乗っただけのタレントさんからのものが多いのです。

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増沢 隆太

株式会社RMロンドンパートナーズ  東北大学特任教授/人事コンサルタント

芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。

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