フォースを使え:その背景の東洋哲学

画像: photo AC: acworks さん

2017.05.09

ライフ・ソーシャル

フォースを使え:その背景の東洋哲学

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/世界にはフリーエネルギーが満ちている。だが、それらは、いつもたがいに相殺しあっていて、全体としては、なにも起こらない。しかし、その方向とタイミングをうまく整えることができるなら、そこから莫大な力をひきだすことができる。/

 これに対し、アスリートは、その基礎筋力もさることながら、それ以上に、それぞれの関節ごとに、一方の筋肉のみに力を入れ、他方はその動きをじゃましないように完全に弛緩させる。全身のそれぞれの筋肉がそれぞれの最適のタイミングのみで力を発揮する。ムダが無いから、持てる筋力を最大に結果に生かすことができる。

 エネルギーが無いのではない。なにも起こっていないように見えるところでも、その中で相殺され、拡散されて、結果としてなにも起きないだけ。逆に言えば、世界はフリーエネルギーに満ちている。デタラメに進むスクランブル交差点の大勢の人々の歩く向きと歩幅を揃えたら、怒濤のようなデモ隊の行進になる。いや、向きを揃えなくても、信号でそれぞれの方向に渡りたい人々のタイミングを分けてやるだけでも、そこから力を取り出せる。

 なぜきみは結果を出せないのか。力が足りないのではない。やっていることが、いつも支離滅裂で、ぜんぶがぜんぶ、たがいにつねに相殺してしまっているから。なぜ考えがまとまらないのか。なぜ力が発揮できないのか。そこにさまざまな迷いがあって、それらが最適なタイミングで最大の力を出すべきときに、その力を自分で押し止めてしまっているから。

 なぜ精神統一や、集中力が重要なのか。雑念が、きみからきみの本来の力を削いでしまっているから。ほんとうに必要なことだけに全身全霊の神経と筋力を合わせ、それ以外のあれこれは完全に解き放って、本来の動きのジャマをさせない。道教で「無為自然」というのは、この解放と集中のこと。なにもしないのではない。無理をしない、ただ道理に則るのみ。そして、無理をしないからこそ、あるべき本来の波に乗れて、物事を成し遂げることができる。

 これは、組織でも同じ。余計なことはすべてサポートに任せ、本隊は本業に専心。休む者は休むべきときに休み、動く者が動くべきときに動く。それが全体でうまく均整が取れるとき、その内部にある力を最善に発揮できる。社内で疑心がはびこり、たがいに様子見で腰が引け、それどころか、方針方向がバラバラで足の引っ張り合いをするような組織は、大きくなるほど、ムダに有り余る自分自身の力で自滅的に内部崩壊する。

 すべての雑念を断ち切れ。余計なことは考えるな。ただ一点にだけ精神を集中し、その一念のみを自分自身として、その他のムダな緊張をなにもかも解き放て。そのとき、きみはレーザー光のようにどこまでもまっすぐ突き進むことができる。フォースと共にあらんことを。


by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka. 大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。近書に『アマテラスの黄金』などがある。)

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純丘曜彰 教授博士 / 大阪芸術大学 哲学教授

我、何を為すや。忙しさに追われ、自分を見失いがちな日々の中で、先哲古典の言を踏まえ、仕事の生活とは何か、多面的に考察していく思索集。ビジネスニュースとしてシェアメディア INSIGHT NOW! に連載され、livedoor や goo などからもネット配信された珠玉の哲学エッセイを一冊に凝縮。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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