NIH症候群を制御せよ

画像: barnimages.com

2016.09.28

経営・マネジメント

NIH症候群を制御せよ

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

Not Invented Here 症候群(NIH症候群)とは、第三者が生み出した技術や製品もしくはアイディアを「ここで発明したものではない」という理由から無視・軽視または敬遠する症状を指す用語。もちろん、新規事業の開発時にも生じやすい。

さらに付け加えるなら、その長くしんどいプロセスの間、担当者たちを常に叱咤激励してくれる役員の存在が重要だ。

本当に実現できるか、そして利益を生むか分からない段階から、何人かの人数が関与して検討やヒアリングで多くの時間を費やすため、延べ人数にすると相当な工数となる。それでも新規事業開発が経営の最重要課題の一つだと認識している経営者が大手企業には多い。だから着想者が役員本人の場合はもちろん、社内出自であれば、可愛い部下が考え出したアイディアを実現するために苦労しているチームをサポートしたくない役員は滅多にいない。

しかし外部の人間が考えたアイディアの場合(当初は素晴らしいと思われたものでも)、どうしてもその後の扱いが辛口になりがちで、すぐに事業化が難しいとなれば、我慢強くサポートする代わりに引導を渡すことになりがちだろう。

こうしたNIH症候群を非難することはたやすいが、人間心理に根差したものゆえに企業現場から排除することは難しい。現実的なやり方はむしろ「制御する」ことだ。つまりそうした心理が生じやすいことを前提に、いかに実害をなくすかに工夫を凝らすのである。

かなり昔だが小生にもNIH症候群による苦い経験が幾つかある。そうした経験を重ねた結果、弊社では新規事業案を企画するプロジェクトでもコンサルが主導して新事業を着想する方式は執らない。あくまでコンサルはファシリテータとしてプロジェクト参加者の着想やその発展を促す役に徹するようにしている。

もちろん、着想のヒントや他業界の類似ネタを出したり、「例えば…」という形で方向づけをしたりすることはある。その場を経営者の方々が見たら多少まどろっこしい部分もあろうが、結局はそのほうが事業化実現の可能性が高くなると信じているからである。参考にしていただけると幸いである。
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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。新規事業の開発・推進、そして既存事業の収益改善を主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/               弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashinban/            最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/

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