「病児保育」のビジネスモデル

2007.04.21

経営・マネジメント

「病児保育」のビジネスモデル

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

新しい商品開発のヒントは 「不」 の付く言葉にある、とよく言われます。 つまり、不平、不満、不便など、意識的、あるいは無意識的に 消費者が感じている問題を発見し、その解決策を考えることが 商品開発のネタになるというわけです。

ただ、非常に大きな「不」があるにも関わらず、
まずもって「採算が取れそうもない」という理由で、
ほとんど誰も解決策を考えようとしないで、
放置されてきた問題が相当あるようです。

たとえば、「病児保育」。

体調が悪くなった幼児を預かってくれる「病児保育」サービスは、
非常に少ない数しかありません。

具体的には、全国で5百箇所程度。
保育所は全部で約3万箇所ありますから、その2%にも満たないのです。

そして、病児保育に対応している保育所のほとんどが
公的な支援を受けないとやっていけない赤字運営だそうです。
(支援を受けてもあいかわらず赤字ですが)

補助金などの支援を受けても赤字では、
とても民営事業としては取り組めないですよね。

しかし、「病児保育」のニーズは極めて高いのです。

働く女性が増加し、夫婦共働きがごく一般的になってきた現代、
働きながら子育てをすることの難しさが「少子化」を促進
しています。

この「子育てを難しくしていること」のひとつが、
保育所不足であることはご存知だと思います。

でも、保育所の不足が解消されただけでは不十分なんですよね。
なぜなら、病気の幼児は、
通常の保育所では預かってくれないからです。

子供の具合が悪ければ、会社を休まなければなりません。
また、保育所に預けていた子供が急に熱を出した。
この場合も、親がすぐに引き取りにいかなければなりません。

たいていは母親が会社を早退することになるわけですが、
この結果、同僚に迷惑をかけたり、仕事が滞るといったことに
つながるため、仕事を続けていられなくなる。

ですから、病気の子供を預かってくれ、安心して仕事に
打ち込めるサービスを、特に働く母親は切実に求めています。

今、このニーズの存在を知ったある青年が、
社会起業家として、新たなビジネスモデルに基づく
「病児保育」サービスに取り組んでいます。

NPO法人、

「フローレンス」

代表の駒崎弘樹さんです。

さて、病児保育のサービスを立ち上げるに当たっての問題は、
「小児科医のいる保育施設の運営」を前提とすると、
採算が厳しくなる点です。(これまでの病児保育対応の施設は、
小児科医が常駐することが常識になっています)

既存の病児保育サービスが赤字なのも、ここに原因があります。

しかし、駒崎さんは助成金に頼らず、事業収入で運営費を
きちんとカバーできるビジネスモデルを考え出したのです。

それは、まず「非施設型」のサービスとすること。

このため、地域の子育ての経験のある中高年の主婦を
「レスキュー隊」として組織化しました。

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有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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