脱ジェネリック&原点回帰のアイリスオーヤマが目指す“次の家電戦略”

画像: KamiharaSally

2016.01.12

営業・マーケティング

脱ジェネリック&原点回帰のアイリスオーヤマが目指す“次の家電戦略”

神原 サリー
株式会社神原サリー事務所 代表取締役/顧客視点アドバイザー

 2009年に家電分野に参入した生活用品大手のアイリスオーヤマ。シャープやパナソニックを辞めた技術者を積極的に採用し、大手家電メーカーの後を追いかけ始めた同社だが、昨年後半から、家電づくりに対する姿勢の変化が起き始めている。そのキーワードは「原点回帰」と「脱ジェネリック」。参入からわずか6年ほどで原点回帰という言葉を持ち出すアイリスオーヤマの家電戦略とは?

大手家電メーカーの二の舞になりかねない「多機能家電」も

 そんなアイリスオーヤマのヒット商品となった家電の1つに2014年に発売された「ノンフライ熱風オーブン」がある。前年、オランダに本社を置くフィリップスの調理家電「ノンフライヤー」で一躍脚光を浴びた熱風循環によるノンフライ調理に目をつけ、オーブントースターを上に大きく引き伸ばしたような独特の形状と、シンプルで使いやすい操作感、低めの価格設定が当たったようだ。聞けば、このノンフライ熱風オーブンも、パナソニックで長年電子レンジを開発していたベテランの技術者によるものだという。

 ただ、こうした大手家電メーカー出身者を大量採用することが、必ずしも功を奏するとは限らない。なぜなら、このノンフライ熱風オーブンの後継機種となる「リクック熱風オーブン」が発売されたのだが、これが失敗に終わっているのだ。「自動メニュー」や「リクックメニュー」という一見、便利そうでいて実はターゲットが絞られず、使いにくい『多機能かつ高価格』な家電になってしまっているのがその原因だ。

 温度センサーを搭載し、ハンバーグやステーキまでを自動で調理。一方で揚げ物のお惣菜を食感よくカリッと温める「リクック」メニューも搭載、さらにはフライヤーやトースター、グリル機能など一台三役で使える多機能さをアピールしているが、お惣菜を頻繁に買ってくる人はハンバーグをひき肉からこねて作ることはしないだろうし、何より、ボタンが増えて使いにくくなってしまった。価格も発売当初の想定売価は従来モデルよりも2万円ほどアップしており、“技術ありきの多機能、高価格家電”になってしまったのだ。

 これでは周回遅れで大手家電メーカーがたどってきた家電づくりの道を再び歩むことになりかねない。そう危惧の念を抱いたのが2015年春のことだった。

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神原 サリー

株式会社神原サリー事務所 代表取締役/顧客視点アドバイザー

新聞社勤務を経て、フリーランス・ライターに転身。マーケティング会社での企画・広報などを兼務した後、顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして独立し、2008年に株式会社神原サリー事務所を設立。「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」ことをモットーに顧客視点でのマーケティングを提案している。

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