「失業なき労働移動促進政策」がもたらす、日本型終身雇用制度の終焉

2015.08.17

経営・マネジメント

「失業なき労働移動促進政策」がもたらす、日本型終身雇用制度の終焉

川崎 隆夫
株式会社デュアルイノベーション 代表取締役

8月14日の閣議に提出された2015年度の年次経済財政報告(経済財政白書)には、初めて「失業なき労働移動の促進が重要」との認識が示されました。「失業なき労働移動の促進」政策によって、今後雇用環境はどのように変わっていくのでしょうか?

本年3月に労働移動支援助成金(再就職支援奨励金)は拡充され、従来は中小企業のみを支給対象としていましたが、3月からは支給対象に制限がなくなり、大企業などにも支給されるようになりました。加えて、労働移動支援助成金のひとつ「再就職支援奨励金」は、企業が労働者の再就職支援を再就職支援会社に委託しただけで、まず労働者一人当たり委託時に10万円が支給され、その後再就職決定時などに、最大で一人当たり60万円まで支給されることとなりました。

併せて労働移動支援助成金は、従来の「再就職支援奨励金」に加えて、新たに「受入れ人材育成支援奨励金」が創設され、2本立てとなりました。新しく創設された「受け入れ人材育成支援助成金」とは、再就職援助計画等の対象となった労働者の雇い入れ、移籍による労働者の受け入れ、または在籍出向から移籍への切り換えによる労働者の受け入れを行い、それらの労働者に対して訓練を行った事業主に対して支給される助成金のことです。この助成金の創設により、受け入れ側の企業は、再就職援助計画の対象となった労働者を採用しやすくなりました。

■再就職支援会社のサービス内容

規制改革会議の第三次答申で触れられている「民間の職業紹介事業者」というのは、一般的な職業紹介会社ではなく、「再就職支援(アウトプレースメント)会社」のことを指します。

再就職支援会社とは、一般的な職業紹介会社とは異なり、人員削減を検討している企業などから委託を受けて、希望退職に応募した人材等の再就職を総合的に支援するサービスを提供する企業のことであり、登録した求職者の意向を受けて転職支援を行う一般的な職業紹介会社とは、ビジネスモデルが全く異なります。よって、一般の個人が再就職支援会社に登録して、受け入れ企業開拓などのサービスを求めることはできません。 全て企業・法人単位での契約になります。

標準的な再就職支援会社が提供する主なサービスは、以下のようなものです。

1.キャリアカウンセリング

求職者のキャリアの棚卸を行い、転職先の選定などについてアドバイスを提供します。

2.再就職のためのノウハウ提供

応募書類の作成支援や、面接対策などの指導を行います。

3.求人企業の開拓

求職者に適した転職先の開拓を行います。

4.再就職のためのオフィス提供

再就職支援会社内のデスク等を利用し、PCなどを使った転職活動を行える環境を提供します。

再就職支援会社を活用すると、求職者が個人で活動した場合と比べて、求人企業の開拓はもとより、再就職に必要とされるノウハウなども吸収できるので、短期間で再就職に成功する可能性が高くなります。

次のページ■「中高年雇用流動化時代」への対応策

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川崎 隆夫

川崎 隆夫

株式会社デュアルイノベーション 代表取締役

経営コンサルタントの川崎隆夫です。私は約30年にわたり、上場企業から中小・ベンチャー企業まで、100社を超える企業の広告・マーケティング関連の企画立案、実行支援や、新規事業、経営革新等に関する戦略計画の立案、企業研修プログラムの策定や指導などに携わってきました。その経験を活かし、表面的な説明に留まらず、物事の背景にある真実が浮かび上がってくるような、実のある記事を執筆していきたいと思います。

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