前田敦子はキリストではない~日本製造業の正当なる後継者AKB48

2012.12.04

経営・マネジメント

前田敦子はキリストではない~日本製造業の正当なる後継者AKB48

坂口 孝則
未来調達研究所株式会社 取締役

日本製造業の後継者はAKB48に他ならない。カイゼンを徹底し、顧客第一主義を貫く商品づくりの2点において、モノづくりとAKB48は奇妙な合致を見せる。AKB48に未来を感じることは、日本に未来を感じることだ。

すべてはファンのため。「顧客志向」が貫徹している。

お客の声を優先することは、徹底した無思想に支えられている。自分たちの考えではなく、お客こそが正しいとする無思想。少人数のお客にだけ売れるこだわりではなく、多数に売れることこそが正義なのだ。「ヒットはすべて正しい」のである。その意味で、AKB総選挙は、センターを人気投票だけで選抜する徹底した、そして優れた無思想システムだった。

自動車は歴史をへて、単なる移動手段から嗜好品になった。機能だけを追い求めるだけではだめで、移ろいやすい消費者の心をつかむ必要がある。そして、それは自動車だけではない。他の商品も同じだ。

かつてのソニーやパナソニックやホンダは、創業者がミカン箱の上に立ち、自社を世界的な企業にしてみせると社員の前でスピーチし、苦労と努力を重ねながら夢を実現させていった、ある種の「物語」をもっている。彼ら創業者(井深大氏・盛田昭夫氏、松下幸之助氏、本田宗一郎氏)は、自社商品以上に有名だ。商品が嗜好品になるにつれ、お客が商品を選ぶ際に重視するのは、この「物語」になっていく。

おそらく、AKB48の総選挙を見て泣いた人がいるとすれば、彼女たち一人ひとりの「物語」に共感したからだろう。人びとの関心は、企業を作り世界に羽ばたいた起業家物語から、アイドルの立身出世物語に移ってきた。AKBは楽曲とライブを売りにしているのではない。メンバーの人生を販売しているのである。

ソニー創業者の井深大氏・盛田昭夫氏のスピーチに感銘を受けたのが、アップルのスティーブ・ジョブズで、彼はプレゼンの名手となった。本場日本では、AKB48がスピーチの巧みさを受け継いだ。AKB総選挙を見てもわかるとおり、彼女たち並みにスピーチがうまいひとたちを探すほうが難しい。

私がAKB48を「日本製造業の正当な後継者」と呼ぶのは、こういった類似性がある。

え、そんなにAKBが製造業に似ているんなら、日本的製造業のもう一つの特徴である「年功序列」はどうかって?

調べてみた。第3回AKB総選挙での結果だ。

・メディア選抜(上位12人):平均年齢20.0歳
・選抜メンバー(上位21人):平均年齢19.5歳
・アンダーガールズ(22~40位):平均年齢18.4歳
マジかよ。

製造業とおなじく、「年功序列」なのか。

次に第4回AKB総選挙での結果だ。

・選抜メンバー(上位16人):平均年齢20.5歳
・アンダーガールズ(17~32位):平均年齢19.9歳
・ネクストガールズ(33~48位):平均年齢18.6歳
・フューチャーガールズ(49~64位):平均年齢18.4歳
マジかよ。

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

坂口 孝則

未来調達研究所株式会社 取締役

大阪大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務に従事。未来調達研究所株式会社取締役。コスト削減のコンサルタント。『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)など著書22作。

フォロー フォローして坂口 孝則の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。