前半はBCPの在り方について、後半は企業の「安全配慮義務」と法令遵守について、現在支援している各社とのやりとりを踏まえてまとめてみます。
◆ 2011年の東日本大震災からの教訓
先の大震災では、私の地元宮城県も大きな被害を受けました。この時にBCP策定により乗り切った会社も多くありましたが、被害が甚大過ぎて復旧が進まないということも多くありました。
まず、電力・水道・ガスが段階的に復旧し、完全に稼働したのが1か月以上経過してからという事実を、現在BCPを策定している企業がどこまで認識しているのかという課題があります。
3月19日には東北道を通って被災地に物資を届けに行きましたが、都内での給油は半日作業で、被災地ではガソリン・軽油等が枯渇し、沿岸の物流拠点は津波で被災し、物流がほぼストップしている状況でした。
このような状況の中で、無理にBCP通りに遂行しようとしたところで、流通が止まれば配送できませんから製造だけが稼働しても意味がないことは明白です。
逆に、当時備蓄をきちんと行っていて事業にはない運送までを行ない取引先の事業活動を支援した企業もありますので、BCP策定を行なうのであれば事業内容の整理と取引先の対策状況の把握も重要となります。
◆ BCP策定より災害対策を徹底した方が良い理由
平成25年4月には東京都の帰宅困難者対策条例が施行されます。
この条例は努力義務と明記していますが、東京都内の企業に従業員の安全確保を目的とした3日間の滞在を可能とする備蓄を推奨するものとなっています。
努力義務とはいえ条例として定められていて、実施しなくても罰則がないだけの話しですので、企業コンプライアンスの観点からすれば対策には着手しておかなければならないと考えられます。
さらに、従業員の安全管理という観点で言えば、民法644条および最高裁判例によって、就業場所となっている企業がその事業場で働く全ての労働者の安全管理に対する義務を負っていることが明確にされています。
これらの観点から、従業員か否かではなく、事業場にいる全ての労働者に対する「安全確保」が必要となるわけですが、これはBCPの前提となる従業員の復旧作業への従事(及び稼働率)につながる重要な取り組みと考えることができます。
災害発生から電気や電話等の通信手段が遮断されている間に、各人が自分自身の身を守り、また家族の安全を守り、安心して事業復旧に従事することで、初めてBCPが現実のものとなりますのでBCP策定の着手前でどこから対応していこうかと考えている状況であれば、まずは災害対策や安否確認という実務的なところからの対応が望ましいと考えます。
BCPを策定しても、社員の半数以上がけが人となってしまえば計画通りに復旧が進められるかは不透明となりますので、まずは災害発生時に社員一人一人が何をすべきかを共有して頂ければと思います。
他社からの人材の投入という対策プランを考えている場合でも、大規模災害となれば移動や滞在、食料供給等の制限を受けますので、まずは自分たちの身を守ることを最優先することが求められます。
※BCP/BCMの個別実務については下記サイトで公開しています。
http://bcm.enna.co.jp/
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BCP/BCM
2012.10.18
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