「成果主義」の時代を生きるために

2012.06.28

仕事術

「成果主義」の時代を生きるために

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

ますます短期的な成果が求められるビジネス現場にあって、「結果を出すこと」と「プロセスをつくること」のどちらが大事か?───は、とても悩ましげな問題です。このテーマを深く考えることは、結局、「働くとは何か?」「仕事の幸福とは何か?」につながっていきます。

 Bさんの図で注目すべき点は、上で輝いている目的がモチベーション・やる気を起こし、プロセスを刺激していることです。
 人間は意味から力を湧かせる動物です。ですから、結果を出すことのプレッシャーが多少あったとしても、自分のやることに意味を見出していれば忍耐力と継続力をもって頑張ることができます。その力はプロセスを育みます。そして最終的に結果につながっていくわけです。すると、また次の目標に向かっていける。「しんどいけど楽しい。もっと挑戦してみよう!」という気持ちになれるのはこうしたメカニズムによるものです。

 Aさんはいわば、「目標に働かされる働き様」で、
 Bさんは、「みずからの目的に生きる働き様」と言っていいかもしれません。

◆「結果追求」から解き放たれた人間が得る「ライフワーク」
 男子フィギュアスケートの高橋大輔さんは、2010年のバンクーバー冬季五輪で銅メダルを獲得した後、将来のことについて、「スケートアカデミーみたいなものを作ってみたい。僕はコーディネーターで、スピン、ジャンプとかそれぞれを教える専門家をそろえて……」と語っていた。結局、その後も現役続行ということでこの計画はしばらく置くことになりましたが、彼は将来必ず実行すると思います。

 また同じように、プロ野球の読売巨人軍、米メジャーリーグで活躍した桑田真澄さんも引退表明時のコメントは次のようなものでした。―――「(選手として)燃え尽きた。ここまでよく頑張ってこられたな、という感じ。思い残すことはない。小さい頃から野球にはいっぱい幸せをもらった。何かの形で恩返しできたらと思う」。その後、彼は若い世代への野球指導の道で精力的に活動を続けています。

 一方、プロサッカー選手として現役にこだわる三浦知良さんはこう言います。───「かなったか、かなわなかったかよりも、どれだけ自分が頑張れたか、やり切れたかが一番重要」、「成功は必ずしも約束されていないが、成長は約束されている」(『カズ語録』より)。

 勝負の世界を生き抜いてきた3人のこうした発言には、「結果を出すこと」を超えたところにある何か深い境地が感じられます。彼らは、いまや、フィギュアスケートと共にある人生、野球と共にある人生、サッカーと共にある人生、そのプロセス自体を深く噛みしめながら毎日を送っている。もちろんプレーをすることは依然最上の喜びでしょうが、人を育てることにも強いやりがいがあるでしょう。スポーツ普及のためにさまざまな場所で論議をし、イベントを企画・開催する。そうしたことに知恵を出すのも刺激的にちがいありません。
 そこには「結果追求」から解き放たれた人間が得た「ライフワーク」があります。ライフワークとは、人生の「大いなる目的」を見つけ、そこに向かう「大いなるプロセス」に没頭できる毎日です。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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