リーダーとなる人材がいない・・・。それは「昇進のジレンマ」

2012.02.20

組織・人材

リーダーとなる人材がいない・・・。それは「昇進のジレンマ」

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

次代を担うリーダーが出てこない、という企業の悩み。その理由を、これまでどのようにリーダーを登用してきたかを通して考える。

成果を残した者と残していない者がいれば、前者により高い評価を与えるのは当たり前である。より大きな成果は、組織への貢献も大きいのだから分け前を大きくすべきだし、失敗をしたら、それはマイナスの貢献であるから処遇を下げる。これは、企業にとっても雇用される側にとっても、ほぼ異論のないところだろう。評価される側にとっては公平で納得性があるし、成果を出してきた者が上のポストに就くのだから組織も成長し、企業にとってもよいはずだと考えられる。

しかし、ドラッカーに、このような言葉がある。
「優れた者ほど間違いは多い。それだけ新しいことを試みるからである。間違いをしたことのない者、それも大きな間違いをしたことのない者をリーダーの地位に就かせてはならない。間違いをしたことのない者は凡庸である。そのうえ、いかにして間違いを発見し、いかにしてそれを早く直すかを知らない。」

優れた人物は挑戦し、失敗や間違いを犯す。しかし、その経験はリーダーとなったときに重要な素養となる。一方、失敗や間違いを経験したことがない者は、鈍感で対応力にも欠けるのでリーダーたり得ない。だから、失敗や間違いを犯した経験のある優れた者をリーダーにすべきだ、という主張である。

成果に評価を与え、失敗にマイナス評価をするのは当然だ。また、成果をコンスタントに上げ続けてきた者から優先的にポストが与えられるのは、誰にとっても納得性の高いことである。「成果主義」などというものが流行する前から、そうである。しかしその結果、失敗や間違いをしたことがない、“就かせてはならない”者を昇進させてしまうことになる。いくら優秀な者であっても、その失敗や間違いを評価し、「リーダーには失敗や間違いが必要だ」という理由で昇進させることはできない。つまり、コンスタントな成果を求めれば求めるほど、ポストに相応しくない者ばかりを昇進させてしまう。「昇進のジレンマ」と言えるだろう。

実際に、「失敗したらマイナス評価になるので、余計な挑戦はしない」という選択肢が社員にとって有力なものになっている会社は多い。評価制度が、「成功を追求する」よりも「失敗しないようにする」人を増やしてしまっている。成功を求めて挑戦しても、業績に波があったり目立った失敗や間違いがあったりしたら損になる。それよりも、コンスタントにそこそこの成績を残し続け、つつがなく無事平穏に過ごすほうが、より高いポストを得られる可能性が高い。評価制度が、そのようなメッセージとなってしまっているのである。

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

「高齢社会、高齢期のライフスタイル」と「組織人事関連(組織開発・人材育成・人事マネジメント・働き方改革など」)をテーマとした講演を行っています。

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