セレンディピティ~チャンス感度の鋭いラジオになれ

2011.12.27

仕事術

セレンディピティ~チャンス感度の鋭いラジオになれ

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

チャンスはこの空間に無数に行き交う電波のようなものである。感度のよいラジオなら、いろいろと音がつかまえられる。感度の悪いラジオだと、ほとんど何も受信できない。

 2002年にノーベル物理学賞を受賞された小柴昌俊先生も自著『物理屋になりたかったんだよ』の中でこう書いています。

  「たしかにわたしたちは幸運だった。でも、あまり幸運だ、幸運だ、とばかり言われると、それはちがうだろう、と言いたくなる。幸運はみんなのところに同じように降り注いでいたではないか、それを捕まえるか捕まえられないかは、ちゃんと準備をしていたかいなかったの差ではないか、と」。

 私はこれを次のように解釈しています。
 世の中には、実はチャンスがいっぱい溢れている。目に見えないだけで、そこにもあるしここにもある。それは例えば、この空間に無数に行き交う電波のようなものです。電波は目に見えませんが、ひとたび、ラジオのスイッチを入れれば、いろいろな放送局からの音声が受信できる。感度のよいラジオなら、少しチューニングダイヤルを回しただけでいろいろと音が入ってくる。逆に感度の悪いラジオだと、ほとんど何も受信できないか、不明瞭な音声でしか聴くことができない。

 一つの仕事に執念を持って取り組んでいる人は、その仕事課題に対する感度がいやおうなしに鋭敏になってきます。すると、チャンスをさまざまに受信しやすい状態になる。逆に、漫然と過ごしている人は、いっこうに感度が上がらない。だから、チャンスはそこかしこにありながら、それらを素通りさせるだけで何も起こらない。性質(たち)の悪い人になると、「自分にはいっこうに運がないのさ」と天を恨んだりする。

◆偶然をとらえて幸福に変える力は鍛えられる
 こうしたチャンスを鋭くつかみ取る能力を表す単語が「セレンディピティ(serendipity)」です。「セレンディピティ」は、オックスフォード『現代英英辞典』にも載っている単語ですが、まだ簡潔に言い表す訳語がありません。

 東京理科大学の宮永博史教授は、『成功者の絶対法則 セレンディピティ』の中で、セレンディピティを「偶然をとらえて幸福に変える力」としています。「ただの偶然」をどう幸福に導き、「単なる思いつき」をどう「優れたひらめき」に変えることができたのか、古今東西の科学研究の現場や事業の現場での事例を集めて説明してくれています。

 また、セレンディピティを「偶察力」(=偶然に際しての察知力で何かを発見する能力)と紹介しているのは、セレンディピティ研究者の澤泉重一さんです。澤泉さんは、人生には「やってくる偶然」だけではなく、 「迎えに行く偶然」があるといいます。
 つまり後者は意図的に変化をつくり出して、そこで偶然に出合おうとする場合をいいます。その際、事前に仮説をいろいろと持っておけば、何かに気づく確率が高くなる。基本的に有能な科学者たちは、こうした習慣を身につけ、歴史上の成果を出してきたと、彼は分析しています。

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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