トップセラーから採用担当へ

2011.04.19

仕事術

トップセラーから採用担当へ

辰巳 雄悟

住宅メーカー・住友林業には社内公募制度がある。これを使えば年に一度、望む部署に異動できる。ビジネスパーソンのキャリア意識が高まるにつれ、こうした制度を採用する企業が増えてきた。いち早く公募制度を取り入れた住友林業では、毎年新たな職場にチャレンジする社員が現れる。人事部採用担当の幸田も、そんなチャレンジャーの一人だ。

展示場責任者として部下を教える日々を過ごす中で、幸田の心の中にはある思いが芽生えた。「もし自分が教育する部下が、今の100倍ならどうなるだろう。5名ではなく500名を鍛えることができれば、会社の収益をジャンプアップさせることができるのではないか」。

運命の女神は、自ら運をたぐり寄せようとする人間に必ず微笑みかけるものだ。2007年、水戸に赴任して2年半が経つ頃、幸田は社内公募で人事部が採用担当を求めていることを知る。

◆人事部 採用チームへ

以前から幸田は、会社説明会に関わっていた。先輩社員として出席し、学生に仕事の魅力や楽しさ、厳しさなどを伝えていたのだ。学生とふれあう中で、希望に満ちた若者を自分の手で採用し、その成長に自ら携わるようになりたいと考えるようになっていった。

とはいえ営業の仕事に未練がないわけではない。極めれば、まだまだ奥が深いこともわかっている。悩み抜く中で『自分は何をすれば、より会社の成長に貢献できるのか』と考えるようになった。そして出した答は、優秀な若手を採用し、影響を与えること。迷いを吹っ切った幸田は、社内公募に応募する。

上司は激怒した。人事部への応募を、誰にも相談しなかったのだ。支店エースのいきなりの異動、幸田を信頼しきっていた上司からすれば、まさに寝耳に水、裏切りとさえ思える仕打ちである。

しかし、幸田に私心は一切ない。会社に貢献したいとの思いに、一点の曇りもない。純粋でまっすぐな気持ちは、心ある人にはいずれ通じる。最後には上司も幸田を温かく送り出してくれた。

幸田にとっては、再び一からのチャレンジである。採用チームに移って4年が経とうとするなかで、異動前に描いていた思いと、現実のギャップもはっきりしてきた。

採用の第一ステップ「エントリー」には、4.5万名もの学生が応募してくる。そこで何よりの悩みは、応募者全員と会って話ができないこと。幸田には、お客様と深く話をする中で自分は成長できたとの思いがある。だから自分も応募者全員と直接話がしたい。しかし相手が4.5万名ともなれば、物理的に不可能である。

だからといって簡単に諦めるのは幸田の流儀ではない。会社説明会を一回でも多く開き、開催地を一ヵ所でも増やす。一人でも多くの学生と会って話をする。住友林業の素晴らしさを、自分の言葉で伝えるよう努力している。

「エントリー」に続く「会社説明会」「質問会」から複数回に及ぶ「選考」を「内定」まで重ねるというステップを、幸田たちは5名の採用チームで対応している。

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