まずは目標を定めよ!ファナックのプライシングに学ぶ

2011.01.12

営業・マーケティング

まずは目標を定めよ!ファナックのプライシングに学ぶ

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 1月12日付・日経新聞1面の連載コラム「企業 強さの条件」第7部の初回は工作機械数値制御装置の最大手・ファナックが紹介された。そこから学ぶべき点は多い。

 実に世界シェア6割という同社は、富士山のふもと、山梨県忍野村に本社を置く。記事の「ファナックの国産宣言」というタイトル、小見出しの1つに「1カ所で作る」とある通り、同社のポリシーは本社と同じ場所に向上を集約しておくことだ。研究開発・設計・生産を集約するものづくりのメリットを活かす同社のポリシーである。

 記事にはもう1つの小見出しがある。「まず価格を決める」。
 価格の設定方法は、<内外約200カ所に置いた保守サービス拠点を通じて市場の変化や顧客の要望を吸い上げ、競合他社に負けない価格を探る。価格から一定の利益を引いて製造原価を算出する。この原価に収めるのが設計の絶対条件。原価に利益を上乗せし価格を決める手法の逆を行く>とある。

 ファナックのプライシング手法は、「ターゲット価格設定」という。想定される事業規模をもとに、一定の利益が確保できるように価格を設定する。工場設備装置の稼働率が利益に大きく影響する業種で採用されることが多い。一方の原価に利益を上乗せする手法は「マークアップ価格設定」原価に一定の利益のマークアップ(上乗せ)を行うことを意味している。多品種生産などの場合に適している。
 原理原則からすれば、ファナックに「ターゲット価格設定」という価格設定手法が向いているというわけではない。それは同社のポリシーだ。記事では、<「ありきたりの設計を製造段階で改善しようとしてもどだい無理」「利益は開発時点で決まり、製造段階では生まれない」>と、同社の創業者で名誉会長の稲葉清右衛門氏の言葉を紹介している。

 「ありよう」と「やりよう」という言葉がある。あるべき姿を描き、現場でそれを実現する計画を立てる。建築の世界では、本社の設計部門が「ありよう」を設計し、建築事務所・現場が「やりよう」である施工計画を立てて実行する。東洋一の高さを目指して建築が進んでいる「スカイツリー」は、いままさに「やりよう」に従っているのだ。
 ファナックが優先しているのは、ものづくりの現場にありがちな「乾いた雑巾を絞る」的な「現場のカイゼン」への依存だ。「ありよう」の段階が甘ければ、「やりよう」での努力で吸収できるコストはたかがしれているという考え方だ。

 とはいえ、同社は自社の視点だけでプライシングをしているのではない点にも注目したい。
 価格設定には3Cの視点を持つことが必要となる。自社視点(Company)・顧客視点(Customer)・競合視点(Competitor)である。日経の記事中にあるように、<内外約200カ所に置いた保守サービス拠点を通じて市場の変化や顧客の要望を吸い上げ>という顧客視点で、いわゆる「Customer Value」=顧客が受入れられる価値に見合った価格を設定する。「知覚価値価格設定」という。売れる価格帯を明らかにし、原価がそれ以下に抑えこむ設計をするのだ。さらに、製品の競合となる存在とその動きを洗い出し、その上で「競争志向の価格設定」も見据えているのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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