権威という曖昧なもの。それでも権威にすがりますか?

2010.08.10

経営・マネジメント

権威という曖昧なもの。それでも権威にすがりますか?

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

あなたが評価や意思決定の際に頼りにしている権威というもの。実は、それは、絶対的なものではなく、他の誰かが作り出した曖昧なものです。 ノーベル化学賞受賞者の下村脩氏が、そうした権威が作られていく過程を示すエピソードを生々しく語っていますので、今回はそのエピソードを中心に私たちが普段頼りにしている「権威」について考えます。

ノーベル化学賞受賞者の下村脩氏は、日本経済新聞の私の履歴書(2010年7月23日 40面)で、氏が1970年から約6年間、米国の著名な研究者と論争を繰り広げた際のエピソードを紹介しています。

論争の発端は、その研究者がホタルの発光について後に誤りと認められた新しい説を発表したことにありました。その研究者は、自身が高名であるだけでなく、全米科学財団(NSF)の元所長の夫人です。NSFは米国の研究資金の元締めで、そのような影響力のある人が誤った学説を唱えられては困る人も多く、氏によると公然と間違いを指摘する空気があったとのことです。

氏は、その研究者が間違いを悟り、自ら訂正してくれればという考えで、翌年、類似の実験を用いてその誤りを正す論文を発表しました。ところが逆に、その研究者の結論を支持する研究論文が続々と発表されます。そのほとんどが元の実験と同じ条件で行った追試に基づくもので、元の研究者が前提条件を誤って解釈していたのを、追試を行った研究者も同じ誤った解釈のまま実験したをしたのでしょう。結果、元の実験と同じ誤った結論となりました。

氏には、それらが付和雷同的なものであるとしか思えなかったとのことです。その中にはノーベル賞をもらうような著名な研究者も含まれていました。氏は自説に基づく論文を何報か提出し、論争に発展しますが、数の上では多勢に無勢で、一時はつらい立場に立たされたとのことです。その時期、著名な論文誌に投稿をしても、「急いで載せる必要はない」などという納得できない理由で掲載を見送られたこともあったとのことです。権威に従うのは、個を重んじる米国でもあるようです。

最終的には、氏が意を決して、相手研究者と同じホタルの発光実験で、相手の誤りを実験によって証明し、論争に終止符が打たれることになりました。

氏は、「真理を追究すべき

科学研究の底に流れるどろどろしたもの

を垣間見た思いだった」とこの論争を巡る周囲の動きをこのコラムで振り返っています。真理、事実の積み重ねに基づく科学でも、結局やっているのは人間、人間がやることにはどろどろしたものがつきものといった所でしょうか。

権威は、絶対的な事実、基準に基づくものではなく、人々の感想、評価によって作られるものです。

権威者、有力者同士は、実はネットワークでつながっていて、お互いに評価し合うことによって、権威を人為的に作り上げる、確固たるものにするということも少なくありません。

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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