FSC認証から環境認証が抱える問題を考える

2010.02.11

経営・マネジメント

FSC認証から環境認証が抱える問題を考える

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

あなたはFSC認証をご存知ですか?FSCは森林認証制度と呼ばれる環境認証の一つです。今回は、FSC認証を例に、環境認証をめぐる問題について考えます。

FSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)は、環境影響や地域社会、先住民の権利などを含む基準に沿って、森林が管理や伐採され、その森林から切り出された木材を使って生産・加工が行なわれたのを認証する国際機関です。こうした制度は森林認証制度と呼ばれ、森林の適切な管理と、そこから切り出された木材に証明(認証)を発行し、ラベルをつけることで、消費者が環境負荷低減に配慮した木材を選ぶのを支援する制度で、日本では、FSCの他に、もう一つの国際認証PEFC(Pan European Forest Certification Schemes、汎ヨーロッパ森林認証制度)と、日本独自のSGEC(Sustainable Green Ecosystem Council、「緑の循環」認証会議)などが普及しています。

FSC認証は、あまたある環境認証の中でも、(1)サプライチェーン管理、(2)実効性、(3)新しい価値提案、(4)認証の乱立といった非常に難しい問題に取り組んでいる認証の一つです。今回は、FSC認証を例に、環境認証をめぐる問題について考えます。

(1) サプライチェーン管理

環境負荷の低減には、目の前のモノだけで考えるのではなく、その部品や原材料、製品およびその部品、原材料の製造工程、それらの物流など、その源流に遡ってサプライチェーン全体で考える発想が必要です。RoHsやReachといった物質管理、カーボンフットプリント、フードマイレッジなどが同じ考え方に基づくものです。

また、たとえメーカであっても、製造後の流通、使用時、メンテナンス、廃棄時のライフサイクルでの環境負荷も考える必要があります。

サプライチェーンやライフサイクルでの考え方がないと、確かにリサイクル品だけど、その再生過程で新規品を利用するのに比べ多大なエネルギーを掛けている、地産地消だけれでも、零細農地を保護して作っているために、石油の使用量に換算すると、輸入品よりも余計にエネルギーが使用されているという本末転倒な事になりかねません。

しかし、素材から部品、製品のサプライチェーンをトレースする、製品の流通から廃棄までのすべての利用状況をトレースするというのは多大なコストが掛かるため、環境負荷低減のサプライチェーン管理、ライフサイクルアセスメントの取組みは、まだ研究段階のものが少なくありません。

FSCでは、森林に対する認証の他に、認証された森林から生産された木材の加工・流通プロセスで、認証された木材が非認証のものと混ざらず、区別されて取り扱われているかを確認します。

次のページ(2) 実効性

続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。

Ads by Google

この記事が気に入ったらいいね!しよう
INSIGHT NOW!の最新記事をお届けします

中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

フォロー フォローして中ノ森 清訓の新着記事を受け取る

一歩先を行く最新ビジネス記事を受け取る

ログイン

この機能をご利用いただくにはログインが必要です。

ご登録いただいたメールアドレス、パスワードを入力してログインしてください。

パスワードをお忘れの方

フェイスブックのアカウントでもログインできます。

INSIGHT NOW!のご利用規約プライバシーポリシーーが適用されます。
INSIGHT NOW!が無断でタイムラインに投稿することはありません。