~高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~ 1980年~90年台にかけての日本経済のバブルが膨れ上がって破裂前後の頃の、筆者の商社マン生活を参考に小説化しました。 今も昔も変わらない営業マンの経験する予想を超えた苦楽物語を、特に若手営業マンに対して捧げる応援メッセージとして書きました。
「いやいや。あの案件が取れたのは、結局関さんの力なんだ。
 関さんがプロデュースし、関さんが受注への戦略を描いて、
 それが的中したから受注できた。 
 僕なんか、単にその戦略を、戦術として実行しただけなんだ。
 だからあれは関さんのプロジェクトなんだと思う」
宮田は、今回自分がイスラムの現場に出張し、直接お客側と交渉した
案件が結果的に受注に至ったことは、実はとてもうれしかった。
だけど、もっと自分が商社マンとして主導的に最初から最後まで取り
仕切ってみたいという気持ちを抑え切れなかった。
自分自身もっと主導的にプロデュースして、自分自身が主導的に刈り
取るというプロジェクトをしなければ一人前ではないと思っていた。
自分だけの力でブルドーザーの様にもっともっと推進したいと思っていた。
「そうかなー? それは違うと思うわ」
篠原が答えた。
「確かに関さんの力は大きいと思うけど、あのイランの商談が関さん
 だけの力でクローズするプロジェクトだとは私は思わないわ。
 だって、宮田君が現地であの踏ん張りを見せなかったら受注できな
 かったかもしれないでしょ」
篠原はさらに熱くなって続けた。
「それと、受注したこれからのことなんだけど、私がどれだけ宮田
 君にとって重要な仕事を今任されることを知っている? 
 これから私は担当者として、受注金額のうちの日本やイラン以外
 の国から調達してイラン向けに輸出する機器ポーションの管理
 を任されているの。
 それらの機器の輸出に伴うL/Cの発行条件を管理しなくちゃなら
 ないの。 
 それと、それ以外のイラン現地で工事を発注した部分、いわゆる
 ローカルポーションの管理も大変なの。 
 その部分は、現地の工事の進捗に応じてイランの工事業者側に
 工事代金とともに機器代金のInvoiceを発行しして、売掛金の回収
 業務を行いながら、回収漏れが無いよう経理部と与信を担当して
 いる財務部と毎日付合わせ作業などの仕事が向こう1年間に
 わたって延々と続いて行くわけなのよ」
< そ、そら、すごいなー >
「宮田君は、自分ひとりで何かやりたいなんてさっきから偉そうに
 よく口にするけど、そういうことじゃないんじゃないの?」
篠原由美子の熱い話を聞いて、宮田は自分が高校生の頃で大阪の実家
の家業がまだ順調だった頃、初めて親父と酒を酌み交わしたとき、
父が自分に言った言葉を思い出していた。
「シンちゃん。ええか。{働く}っちゅうことはどういうこっちゃ
 わかるか?{働く}とはな。{傍(はた)楽く}と書くんや。
 その意味はな。 傍、つまり自分の周りの人を楽にするという
 こっちゃ。
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商社マン しんちゃん。 走る!
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