コラボのちから ~コラボレーションが生む新たな価値

2009.12.08

営業・マーケティング

コラボのちから ~コラボレーションが生む新たな価値

猪口 真
株式会社パトス 代表取締役

モノが余りだすと、モノが提供する単純な機能はあたりまえであり、その機能がその個人の価値観をどう満足させるかが焦点となってきた。こうしたニーズにどう応えるか、それがコラボレーションの力だ。

コラボレーションの力

そうした状況を簡単に生み出すことができるのが、コラボレーションの力だ。かつて、ナイキとアップルが行った、「音楽」と「ランニング」をコラボレーションさせた事例があった。単なる1メーカーの力だけではなしえなかった、「走りながら音楽を聴き、その記録もとる」機能は、顧客に新しいライフスタイルを想起させ、新たな価値提案を可能にした。
最近トヨタは、車内の音楽をヤマハで行うことを発表した。車内にコンサートホールのような音響を実現するということだ。もともとグループ会社だという人もいるだろうが、トヨタが「車内の音響をホール並みに」と独自に展開するよりも、顧客側は「ヤマハ」という固有名詞を得ることで、具体的に「コンサートホールのような」というその効果をイメージすることができる。ヤマハにしても、「一歩進んだスピーカーと言えばBose」というブランドイメージに一石を投じることにつながる。

広告には例が多い。最近サントリーとタワーレコードは、「No Whiskey No Music」という、お酒を飲みながら音楽を楽しむという、ライフスタイルを提案する広告を展開している。単純に「音楽のおともにウィスキーを」と訴求をするよりも、「タワーレコード」という固有名詞を出すことで、「CDを買って家で飲みながら聴く」行為を具体的に想起することにつなげている。
また、電車広告には、Macと日経ビジネスという一見無関係の企業のコラボ広告が掲載されていた。「仕事ができる人はMacでコーヒーを飲み、さらに仕事ができる人は日経ビジネスを読む」といった趣旨の広告だ。そのふたつを対比させることで、顧客は容易に朝食を摂りながら情報収集を欠かさないビジネスマンの姿を想像することができる。単にビジネス誌を読む必要性を訴求するよりも、朝Macで読むという行為を想像することで、より具体的な行動を眼に浮かべることができる。(もちろん、そうした生活提案を顧客が受け入れるかどうかは別な話だ)

コラボレーションというのは元来、お互いに技術を持ち寄り、商品としての魅力を増大させ、新しい機能、新しい利便性を提供するものだ。
しかし、もっと効果を生み出すのは、生活者が具体的な商品名を思い起こすことで可能になる、こうした新しい「価値想起」提案だ。別の市場を持つ他社と組むことで、新たな生活のスタイルを顧客は想起することになる。

たとえば、化粧品メーカーはスポーツメーカーと組むことでスポーツ時のメイクという具体的なシーンを想像し、新たなジャンルを創造することにつながるだろうし、住宅メーカーにしても、食品や音楽、IT業界など、単純なベネフィットの先にある生活提案まで踏み込むことができれば、これまでの住宅設備メーカーなどとの提携では得ることのできなかった新しい価値の提供をすることにつながるはずだ。

今「市場が動かない」「市場が停滞している」と嘆くビジネスマンは多い。しかしその前に、新たな価値想起を顧客に提供するためにこうした他業界のコラボレーションを考えることは、新たな市場開拓のもっとも有効な手立てのひとつだろう。

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