日系アパレル中国進出第2期の課題

2007.09.07

営業・マーケティング

日系アパレル中国進出第2期の課題

坂口 昌章

日本人向けに作られたアパレル商品は、中国市場に受け入れられない。中国市場は日本とは全く異質な市場だ。それに対応するには「現地化」が欠かせない。「現地化」には権限委譲、国際的な雇用システムへの対応が条件になる。

3.意志決定者の高齢化が若い中国に対応できない
 大手企業ほど、経営陣や社員の年齢が高い。そして、欧米崇拝が抜けずに、中国人が日本に求めているものを理解していない。上海には本物の欧米ブランドが既に進出している。上海で欧米の真似をしても評価されないのだ。
 中国人が日本に求めているのは、日本オリジナルであり、欧米のコピー商品ではない。また個性のないベーシック商品でもない。ベーシック商品ならば、驚くような低価格の商品がいくらでもある。
 中国は若い国であり、経営者も若い。日本のように高齢者が裕福なのではなく、富裕層は若い世代である。そんな中国市場では、日本以上に若くて新鮮な感性が求められている。日本ブランドに求めているのは、「ジャパン・クール」と呼ばれる感性にほかならないのだ。
 中国の事業には、日本の経験が染み付いているベテランよりも、既成概念にとらわれない若い世代の方が向いている。但し、日本型組織にどっぷりと使っている人は通用しない。自らが課題を発見し、自ら解決策を考え、自ら行動できる自立した人材が必要である。しかし、そういう人材の多くは日本型組織の中でスポイルされてしまう。奇跡的にそういう人材が見つかったとしても、その若い人材に権限を委譲できるかが課題になる。
 先日、日本の老舗ストッキングメーカーが有名雑誌モデルに企画協力を依頼している様子をテレビで紹介していた。そのモデルと打ち合わせしているのは、ベテランの男性社員である。モデル起用の前に、ストッキングを着用したこともない男性社員が、企画を担当していることこそ問題だろう。そして、モデルに対応するのは男性社員ではなく女性社員にすべきだ。このように日本国内でも権限委譲は十分ではない。
 日本人の若い世代に権限を委譲できない会社が、中国人に権限を委譲できるわけがない。現地化を達成するには、権限委譲ができる企業でなければならないし、若い世代が中心となって活躍できる組織を作らなければならない。

4.現地法人を設立しないケースも考える
 かつて、中国生産を行うためには、中国に合弁企業を設立しなければならなかった。同様に、直接中国市場で卸売や小売りを行うのであれば、中国に法人を設立しなければならない。正式な法人でなければ、請求書を作成することもできない。中国で金銭の絡む商取引をする委譲は会社設立が必要である。
 しかし、これは直接進出する場合である。そもそも、中国市場進出とは何を意味するのか。単純に、商品を輸出したいのならば、中国企業を相手に輸出すればいい。その商品を卸売するのも小売りするのも、中国企業であれば容易である。
 中国に法人を設立し、その法人を現地化するのは非常にハードルが高い。給与体系や組織の問題は、現地法人の問題だけでなく、本社の国際化が必要だ。中国進出を機会に本社そのものを国際化させるというのであれば、それもいい。しかし、単純に商品を販売したいというだけならば、現地法人を設立しない方法も考えてみるべきではないだろうか。
 例えば、中国のアパレル企業とブランドライセンス契約を交わすという方法もある。ほとんどの中国アパレル企業は、縫製工場を持っている。現在の日本アパレルは商社経由で複数の中国アパレルにOEM生産を委託しているが、それを中国内販の能力を持つ中国アパレルに切り替える。そして、中国販売分のライセンス生産と中国内販のライセンス契約を結ぶのである。
 コスト軽減ばかりを追求すると、輸出向けの奥地の工場に仕事を出すようになるが、内販を前提に考えるのであれば、内販の利益を含めたコストを設定できるはずだ。
 現在のアパレル企業の多くは、生産と営業が分離している。生産コストを厳しく押さえる一方で、内販のための営業コストには無頓着だ。営業コストを掛けずに、ライセンスビジネスの利益が上るのであれば、生産コストは多少高くなっても構わないはずである。
 そう考えると、現在の生産委託先が相応しいパートナーかどうかを、再考する必要があるだろう。商社への生産管理の丸投げも見直す必要が出るかもしれない。安い工場に分散して生産を依頼するのではなく、一社としっかり取り組み、中国内販を行うだ。あるいは、全てを中国生産に依存するのではなく、やはり日本国内の工場も必要であると考えるかもしれない。
 いずれにせよ、縦割りの組織で考えるのではなく、生産、営業両面を含めた経営判断が必要になるだろう。◆

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