「打倒スタバ」を目論む「個」の戦略

スタバをはじめチェーン店に市場を奪われてきた独立系コーヒーショップ。「個」のサービスと、「地域性」に照準を合わせた店づくりに、リテーリングの未来を見た・・・。

店内は、中央に円を描いてバリスタのカウンターが5、6個並ぶ。それをぐるりと囲むように、壁沿いにぐるりと客席が設置されて、あたかも劇場にいるような気分にさせる。

アーティストやファッショニスタ、インテリが集うアボット・キニーの街を意識し、見知らぬ人が隣あわせに座り、気軽な会話に興じる、「コミュニティの空間」を創造すべくして設計された店だという。チェーン店とはいえ、「どこに行っても同じ」という紋切り型の店をつくるのではなく、地域性にこだわった店づくりが心憎く、それが、ウェブ時代のリテーリングの姿だと確信させる。ウェブの普及で、地域的障壁を取っ払ってどこに居てもありとあらゆる物が手に入る時代になったが、だからこそ、「そこにしかない」良さを発揮できる店舗づくりを考えなくてはならない。物販業でも、サービス業でもそれは同様だ。

「本物志向のコーヒー好き」をターゲットとしたビジネスの展開は、ただの「コーヒーショップ」の域に留まらない。コーヒーの試飲クラス、焙煎所ツアー、プロを目指す人も、アマチュアも参加できるバリスタ・クラスなど、各種イベントも充実している。「おいしいコーヒーを飲ませる」ことだけに固執するのではなく、むしろ、「コーヒーのある暮らし」を顧客に楽しんでもらう、そこに焦点を置くことで他の店と一線を画す。販売もマーケティングも、「特定多数」に訴えることが容易になったウェブ時代に、「わたし仕様」を求めるお客様の心をくすぐる「個」のリテーリングの仕組みが、アメリカでは次々と生まれている。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。

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