iPhoneに学ぶ:「技術」は誰がためにある

2007.08.29

経営・マネジメント

iPhoneに学ぶ:「技術」は誰がためにある

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

iPhoneが売れに売れているそうだ。 米国にて発売以来2か月。2007年9月末までに100万台を売る勢いだという。 そこから「技術」というもののあるべき姿を考えてみたい。

マーケティング環境分析には「技術」というキーワードは必ずついて回る。
マクロ環境分析・PEST(Political・Economical・Social・Technological)では、その分析項目の一つになっているだけでなく、お馴染みのSWOT分析でも頻出する。
そして、分析の際によくあるのが、「技術力がある」などという表現だ。
研修などであれば、まさにそこは「突っ込みどころ」である。
「その”技術”って一体どんな技術なの?」・・・と。

「技術」という言葉は、ともすると「最先端の技術」がイメージされやすい。
広辞苑によれば「科学を実地に応用して自然の事物を改変・加工し、人間生活に役立てるわざ」とある。
ポイントは「科学を応用・人間生活に役立てる」だろう。つまり、最先端であるか否かは問題ではない。

日経新聞8月27日朝刊に「使い手本位でiフォン(iPhone)旋風」「アップル、来月100万台へ」「技術至上の日本に教訓」の見出しが躍る。
最後の「技術至上」という表現が記事の内容を端的に表している。
<アップルがiフォン(iPhone)で申請した特許は二百件にも及ぶが、実際の技術の多くは他社からの「借り物」でそろえた>とある。
それに対し<半導体や液晶などの自前技術を生かすため、使い手に何の利点があるのか分かりにくい独りよがりな製品を作ることも多い日本メーカー>とし、
<「(部品から最終製品まで手がける)垂直統合が強さの源泉」>というソニーが引き合いに出されている。

ここでは二つのものの見方ができよう。

独自の、最先端の技術を追い求めることは、その企業の力、ひいては国力を衰えさせないために重要なことである。
目先の収益確保に限り基礎研究をおろそかにし、中央研究所や技研を縮小するメーカーは長期的な成長の芽を摘んでいることにもつながる。
また、国立大学の独立法人化は大学発の基礎研究が圧迫され、国力を衰えさせるという批判もある。
そうした動きは避けねばならない。

しかし、生活者・顧客を目の前にしたビジネス、マーケティングにおいては、技術はその使われ方を機軸に考えねばならない。
「技術」という言葉本来の「人間生活に役立てるわざ」という部分だ。
スティーブ・ジョブズはiPhoneにおいては彼の独特のデザインに対するこだわりもあるが、徹底して顧客の使い勝手にこだわったという。
そのためには通信キャリアの仕様まで変えさせ、独自機能も実現させている。
現在、自分の傍らにある携帯電話で、使いこなせていない機能、必要ない機能、必要だが使いにくい機能はどれほどあるだろう。
また、そうしたユーザーの不満を内包しながらも、最先端技術満載の日本の携帯電話は国際市場では特異な仕様に執着するため僅かなシェアしか確保できていない。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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